ソロモン名演集「稲盛和夫の実学―経営と会計」を読む。
社長の仕事とは人事と会計とよく言われているが、本書は会計について語ったもの。
経理のダブルチェックについてこう言っている。
「人の心は大変大きな力も持っているが、ふとしたはずみで過ちを犯してしまうというような弱い面も持っている。人の心をベースにして経営していくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いも必要である。これがダブルチェックシステムを始めた動機である。だから、これは人間不信や性悪説のようなものを背景としたものでは決してなく、底に流れているものは、むしろ人間に対する愛情であり、人に間違いを起こさせてはならないという信念である」。
さすがシャチョウである。
あまりにもまっとうで、グウの音もでない、なので、途中から読み流してしまった。
ソロモンが弾くブラームスのピアノ・ソナタ第3番を聴く。
昨日聴いたコンチェルトは、わりとそっけない演奏だったのだが、このソナタではちょっと違う。けっこう、激しい。曲そのものが若々しくはね返りっぽいこともあろうが、ソロモンの弾きぶりもそれに輪をかけていて、おおきく感情移入している。
1楽章は全体的に力が入っており、若い激情が爆発している感じ。
2楽章はラスト近くの盛り上がりのところで大きく揺さぶりをかけている。
問題の3楽章もやはり激しい。過剰気味なスタッカートにほんのりと狂気を感じる。高音の美しさが煌めく。
4楽章はやるせない感じのオーラが惜しみなく漂う。
終楽章は、ゆっくりとしたところで落ち着いてきたかと思うと、軽快さをみせたり、激しさを噴出させたり、起伏が激しい。
全体を通してやや異色の演奏であるから、忘れがたいものになりそうだ。
作曲者が当時若くて揺れ動く感情の持ち主であったように、このピアニストも録音当時、そういう気持ちだったのだと思う。
1952年の録音。
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