ブリギッテ・ファスベンダーのメゾソプラノ、アーヴィン・ゲージのピアノで、シューマンの「リーダークライス」作品24を聴く(1984年10月、ベルリン、ランクヴィッツ・スタジオでの録音)。
シューマンは「リーダークライス」という歌曲集を、作品24と作品39とのふたつ書いているけれど、この24のほうが小ぶりだし、内容も若々しい。ひとつひとつの歌は、ケーキのように甘い。歌手によっては甘すぎることもあるけれど、ファスベンダーはところどころ苦みをきかせている。
女声にしては、艶っぽくはないのだけれど、曲ごとにつける表情が多彩なので、とても面白く聴くことができる。
「山々や城が見下ろしている」では、激情を迸らせている。「ぼくは樹々の下をさまよう」は、ゆったりとした呼吸が深くて、表情の陰影が濃い。「ぼくの苦悩の美しいゆりかご」と「愛らしく、やさしいばらやミルテで」は昔から好きな曲。ここではビターな味わいを醸し出している。若者というよりは、成熟した人間のメランコリー、といった感じ。
ゲージのピアノは軽妙洒脱。歌手に寄り添って隙がない。
パースのビッグムーン。
PR