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デムスのシューマン「交響練習曲」

2008.01.19 - シューマン

schumann

シューマン ピアノ独奏曲全集 デムス

昨夜、テレビをつけてみると「白鳥の湖」をやっていた。マリインスキー劇場の演目だった。
バレエ音楽を、実際に踊りと一緒に見ると、テンポは常に踊り手が踊りやすいような設定になっていることがよくわかる。あたりまえのことかも知れないが、CDを聴いているとそれが全然わからない。
チャイコフスキーの音楽がすばらしいことは重々承知しているつもりだったが、踊りが加わるとこんなに素晴らしいものなのかとちょっと感動。個々の演技の見事さに加え、大勢の白鳥が一糸乱れず飛び跳ねるシーンはオドロキの一言。カメラアングルも臨場感たっぷり。これは録画しておくべきであったと後悔しつつ、挙句の果てには途中で寝てしもうた(;´^`)ゞ


さて、デムスのシューマン全集、1/4ほど聴いたけど、ムラがある。演奏もそうだけど、録音もけっこうばらつきがあるようだ。
そのなかで、交響練習曲はいい。
ピアノの音がどっしりと落ち着いているし、覇気に満ちている。他の名演といわれる演奏と比べたって遜色がないと思う。

「謝肉祭」の演奏では、例えばミケランジェリのピアノをメジャー・リーガー級だとすれば、デムスのは高校野球くらいに聴こえた。技術的な冴えがまともに反映してしまっている。
けれどもこの交響練習曲においては、硬軟とりまぜた巧みな投球術を駆使して、A・ロッドを空振り三振に打ち取るような技の冴えを見せつけられる。

強靭なタッチでもって、曲に対する思い入れをストレートに伝えている感じ。
冒頭のテーマから緊張感がみなぎる。音が渾然一体となって縦横にめぐり、シューマンの仄めかし幻想世界を渋くにじませてゆく。
この曲の順序は、ピアニストによって異なることが多いが、デムスは13曲の練習曲のあとに再度テーマを弾き、そのあとに遺作の変奏曲を並べている。
再度現れたテーマがとても効果的で、なつかしいヒトに会えたような軽い驚きがある。そしてこのあたりから、デムスのピアノはますます研ぎ澄まされてゆく。ピアノの音色の豊かな味わいが深く深く広がってゆく。
ラストの変奏曲は、低音が適度な重量感を持っていて心地よい。降り注ぐ高い音は星屑のようにひっそりと輝かしく優しい。
これは掛け値なしの名演奏だ。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんにちは

チャイコフスキーのバレエは、組曲以外のところがものすごく難しいんですよ。前に、「胡桃割り人形」の伴奏に出たことがあるんですが、あああ、こりゃアカン、というほど難しいパッセージがあちこちに~爆~。それとバレエの場合は、踊り手のテンポというものもあり、勝手にテンポが変わったりすると、ダンサーが転けて負傷ということもあるようです。ですから、普段、バレエの伴奏をしているオケストラは、ものすごく上手い、ということになるみたいです。
私も、バレエ、見逃しました、爆~

イェルク・デームス、懐かしい名前ですね。確かヴィーンの出身のピアニストではなかったでしょうか?グルダと同輩ではなかったかと~。
最近、名前を聞かなくなったような気がしていたのですが、NHKの「ぴあのぴあ」でレッスンもしていたみたいですね~。
一時期、良く来日していたように思うのですが~

またですが、シューマンのこの曲、知りません、爆~。ご容赦の程を~ 
投球術に優れているんですね
それがピアノではどういうことかなって思ったりもしています。
管楽器でも、技量がそれほどでなくても、人柄が演奏に表れている演奏というのもあるんですよ。
ものすごく下手な演奏に、ものすごく感動する、ということも稀にありますよね~
そういったことなのでしょうか?

今回もいい加減なコメントで;;

ミ(`w´)彡 
2008.01.19 Sat 13:46 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

>バレエの場合は、踊り手のテンポというものもあり、勝手にテンポが変わったりすると、ダンサーが転けて負傷ということもあるようです。

確かに、昨日観ていてこれは難しそうだと思いました。声はコントロールできるけれども、踊りは勝手が違うのではないかという気がします。テンポをあわせるということでは、オペラよりもバレエのほうがはるかに大変なように見受けました。ゲルギエフの指揮でしたが、彼は何でもこなしますねー。

デムス、グルダ、スコダのウィーン三羽鳥ですね。このヒトは地味ではありますが録音は数多く残されているようです。
一度来日公演を聴いたことがあって、モーツァルトの23番だったのですが、あまりよくなくて、それ以来興味がなかったのです。
このシューマン集も、曲によってムラがありますが、交響練習曲は意外といっては失礼ですが、とてもよかったですね。デムスは決してテクニックに優れたソリストではないと思いますが、これについては技術的にも手堅く、丁寧に思い入れたっぷりに弾いていて、聴き応え充分でありました。
2008.01.19 23:20

無題 - sweetbrier

吉田さん、こんばんは。
ブログのデザインをリニューアルされてから初めてコメントします。
山間の凍れる湖?! 本文を読むとまぎれもなく吉田さんなのですが、パッと画面が切り替わった瞬間は、何処へ来ちゃったかとうろたえました。

シューマンの「交響的練習曲」、私は「ぴあのぴあ」で少し聴いただけです。誰の演奏を聴くより、吉田さんのレビューがロマンを奏でているかと。いつも楽しみにしています♪

マリインスキー劇場バレエの「白鳥の湖」、私はハイビジョン放送の際に見ました。臨場感のあるカメラワークでしたね。驚きをもってご覧になったとのこと、バレエファンとして嬉しいです。
ゲルギエフの指揮はバレエ指揮者のそれとはずいぶんテンポが違っていました。緩急が極端だったのです。でも、いい舞台に仕上がっていましたね。

rudolf2006さんのコメント、拝読しました。オーケストラで演奏された方ならばこそのご感想、とても興味深いです。バレエの伴奏はそんなに難しいのですか。初めて知りました。バレエ繋がりの友達にも、そのように伝えます。
余談ですが、私は先週、ドリーブの「コッペリア」、昨日はカナダ人作曲家Glenn Buhrの「美女と野獣」を、関西フィルの演奏(伴奏)でバレエ鑑賞しました。指揮者はバレエ団から。とてもいい演奏でした。長文コメント、すみません。
2008.01.20 Sun 01:32 URL [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

何年かぶりでデザインを変えてみました。やりかたを忘れていて手間取りました^^

「交響的練習曲」は、シューマンのピアノ曲のなかで最もよく聴く曲です。遺作が取り混ぜられていて、ヒトによってはこれを演奏したり、しなかったり、どれが本当の姿なのかよくわからないところ、シューマンらしくて面白いのではないかと思います。
デムスの演奏は素晴らしく、忘れがたいものとなりました。こういっては失礼ですが、うれしい誤算というべきか…。

マリインスキーの「白鳥の湖」、実に見ごたえがありました。例の白鳥の衣装って写真ではよく見かけましたが、動いているところを見るのは初めてだったかも。大勢の白鳥が踊るところ、すごい迫力でありました。

ゲルギエフのテンポは通常と違うのですか。彼が交響曲をやるときはわりと緩急がはっきりしているので、彼のスタイルを通したものなのかも知れませんねえ。
それにしても、「絵」つきのバレエがこんなに素晴らしいものであることを知りました。なにかオススメの公演ありますか(関東地方でやるもの)。

rudolf2006さんのコメントは興味深いですね。音楽を技術面から教えてくださります。
2008.01.20 09:07

無題 - sweetbrier

こんばんは。度々失礼します。
私のコメントに返信してくださったことについて…

> なにかオススメの公演ありますか(関東地方でやるもの)。

すぐにお返事したかったのですが、確実な情報がなくて先延ばしにしていました。いまだにはっきりしないのですが、とりあえず2008年のおすすめ公演は次の3つです。音楽 チャイコフスキー のロシアバレエがよいのではないかと思いまして…いろんな条件を総合してリーズナブルな順に

イチオシは、毎年冬に長期日本ツアーをするレニングラード国立バレエ団の「眠りの森の美女」です。私は先日大阪公演を観ました。
http://ivory.ap.teacup.com/sweetbrier/276.html

できれば主席指揮者のアンドレイ・アニハーノフ指揮の公演を。但し、会場が東京国際フォーラムAの公演は避けられた方がよいかと思います。
イチオシしておきながら申し訳ありませんが、2008~2009年日本ツアーの詳細は未発表です。

2番手は12月のボリショイ バレエ団「白鳥の湖」です。招聘元はジャパン・アーツ。
↓は2008年来日公演のブログです。
http://bolshoi-ballet.seesaa.net/

しかし、オケを帯同してくるかどうかは、今のところ不明です。一昨年の来日では、地元の管弦楽団が伴奏しました。

3番目はドイツ、シュツットガルト・バレエ団の「オネーギン」です。11月~12月来日予定です。関西の公演日程は出ましたが、首都圏のはまだ見あたりません。
こちらはロシア・バレエとずいぶん趣が違いますが、音楽はチャイコフスキーの四季(管弦楽版、編曲はKurt-Heinz Stolze)や即興曲などです。オペラ音楽「エフゲニー・オネーギン」は使われていません。

バレエ公演の伴奏は、テレビ放映されたゲルギエフ指揮の演奏とはずいぶん違うように感じられると思います。以上です。長文失礼しました。
2008.02.04 Mon 22:38 [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

チャイコフスキーは大好物です。
バレエの公演って、意外に多いものなのですね。

>レニングラード国立バレエ団の「眠りの森の美女」
アニハーノフはCD屋でみかけたことがあります。そこでも確か演目はチャイコでした。ここの主席なのですね。
東京国際フォーラムA。勤務地から1分の距離なので、実に便利なのですが…。
たしかにあそこはデカすぎますね。

>2番手は12月のボリショイ バレエ団「白鳥の湖」です。
ボリショイ、私でも名前を知っています。
泣く子も黙るアレですね!?
できれば、オケを帯同してきてほしいですね。地元であれば、関東では東フィルですかねー。
こないだテレビで観た「白鳥」がとてもよかったので、これは観てみたいです。

>3番目はドイツ、シュツットガルト・バレエ団の「オネーギン」です。
これは、チャイコのオペラとは違うのですね。「四季」の編曲というのも面白そうです。

ご丁寧にありがとうございました。
ご紹介のなかで、バレエデビューを実現したいと思います。
2008.02.05 12:57
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