今夜は、山本昌広の引退試合。
先発で最初の丸に対してのみの投球だったから、リアルでは見られなかったのが残念。
いろいろ面白い試合だった。カープ先発の前田は中四日のせいか調子はいまいとつ、けれども無失点で粘っていた。投球数が120を超えたところで交替。
次の大瀬良が打たれて、これが決勝点。
ドラゴンズとしては勝っても負けても大勢に影響はない試合であったが、手を抜いたらカープとタイガースに失礼だから本気で挑んだ。マサの次は大野、若松というエースクラスの継投でファンにこたえた。
マサは男泣き、大瀬良は悔し泣き。
味わいのある試合だった。
ルドルフ・ゼルキンのピアノで、シューベルトの即興曲D.935を聴く。
この曲集を聴いたのは、70年代後半か80年代前半に、ザルツブルクだかウイーンだかの音楽祭でブレンデルが弾いた模様を、FMで聴いたのが最初。彼はその前後にレコード録音もしていて評判も高く、即興曲といえばブレンデルという風潮があった。この録音は、いまもCDで保有している。同世代で、そういう人は多いのじゃないかと思う。
4曲それぞれいい曲だが、とりわけ3番が好きだ。例の「ロザムンデ」の音楽である。ピアニストによって、風景がまったく異なるところがなんとも痛快なのだ。
ニュアンスの精妙さで聴かせるブレンデル(新・旧)、強弱の按配が絶妙なルプー、勢いがいいホロヴィッツ、端正なシフ、高い知性を感じさせるツィメルマン、など。
ゼルキンによる演奏は今週初めて聴いたが、いい意味で期待通り。
これは、スッと背筋を伸ばして描ききった楷書のシューベルト。
硬質の音色はピーンと張り詰めていて、虹色の光彩を放っている。型をくずさないにも関わらず、いや崩さないからか、音符の隙間から明るい詩情が漂う。ほんのわずかなテンポの変化が、そっと琴線に触れる。
最後の変奏に差しかかる。涙を禁じえない。
1979年1月、ヴァーモントでの録音。
森。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR