ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の演奏で、シューベルトの交響曲8(9)番「グレート」を久しぶりに聴きました(1977年4月、シカゴでの録音)。
悠揚迫らざる序奏から第1主題に入る。ここもゆっくりとしたテンポ。ああ、こんな風だったかと思い出し、でも少し驚きました。一歩一歩を踏みしめるように、じっくりとレガートを利かせています。こんな風に演奏するのは、近いところでクレンペラーがあるけど、ここまで極端なのは知る限りジュリーニだけ。
「グレート」を初めて聴いたのがこのディスク(レコード)だったから、このテンポが当たり前だと思っていて、だから他の演奏がことごとく速く感じたものでした。
シカゴ交響楽団の生演奏を聴いたのは、わずかにショルティとブーレーズとの2回のみ。いろいろと印象に残っているなかのひとつは、あたかもバケツの底のようなティンパニの音。ウイーン・フィルやベルリン・フィルはもとより、フィラデルフィア管弦楽団とも違う。
それは、皮の温かみのある音色というより、メタリックで硬質な響き。曲によっては、それが疑問となることもあるのだけど、この録音においては、明るくて強靭なブラスと溶け合った輝かしいハーモニーが、素晴らしい効果をあげているように感じます。
いくぶんデッドなDGの臨場感も、それを引き立てているようです。
よって、この演奏はジュリーニ・マジックとも云えるレガートと、偉大なるバケツの底の2点において、「グレート」のマイベスト盤なのです。
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