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かつどん協議会、アメリングたち、シューベルト歌曲集

2011.06.12 - シューベルト
 
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シューベルト 「歌曲集」 アメリング(S)、スゼー(Br)、プライ(Br)


「かつどん協議会」は、原宏一のデビュー小説。
「ごちそうといったら、かつ丼だ」と言い切る主人公は、会社の派閥問題に巻き込まれて退社し、毎日昼ビールとかつ丼の日々を送っている。ある日、店のおカミさんから会合に出てくれと頼まれる。足を運ぶと、そこは食堂連盟の会議室。かつ丼の復興のための議論がケンケンガクガクと繰り広げられる。
かつ丼における主役を決めて、それを軸に推進していこうということになるが、協議員たちの思惑がぶつかりあい、なかなか決まらない。肉なのか、卵なのか、ご飯なのか、はたまたパン粉、玉ねぎ、醤油、砂糖。
ストーリーそのものよりも、かつ丼の描写がいい。これを読んだら、食べずにはいられない!


アメリングとスゼー、そしてプライによるシューベルトは、身も蓋もないくらいに露骨な、いいところどり企画。ここまで徹底すると爽快だ。
これを聴いて思い出す。昔、映画に凝っていた頃、銀座にあったテアトル東京という大きな映画館で、「ぴあ」が企画した予告編大会という催しに行ったことがある。それは、「ゴッド・ファーザー」や「2001年宇宙の旅」や「太陽がいっぱい」といった、当時からみても懐かしの映画の予告編だけを上演する一晩なのである。1本の映画が凝縮されたエキスが、数分ごとにめくるめく展開されるわけ。それはあたかも「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストのキスシーンみたいな感覚ですね。当時はビデオがまだ一般的に普及していなかったから、こんなにいろいろな映画のハイライトを一気に観られる機会は滅多になかった。あれはたまらない企画だったなあ。

このCDはそれぞれ小品であるけれども、全て「全曲」であるから、さらに完成度は高いというか、文句のつけようはない。
イントロを聴くだけでワクワクして、「ああ来たか」。毎回「ああ来たか」であるから忙しい。選曲から察するに初心者向けの企画なのだと思うが、ハマッた。
アメリングはなんとも可憐な声を聴かせてくれる。小気味のよさに加えて、ほのかな色気もある。どれもわずか数分の曲であるわけだが、音楽のエッセンスがぎっしりと詰まっている。生きるものの哀感が淡く描かれて儚い「野ばら」、不可思議なものに対する畏敬を込めた「音楽に寄せて」、夜露の湿り気がキラキラと纏いつくような「夜と夢」。ことに「野ばら」は、今まで聴いたなかで最高の名唱だと思う。
あと、バリトンにしては高いところがみずみずしいスゼーの「涙の雨」、たっぷりと豊満な声が美しすぎるプライの「菩提樹」も傑作。男声陣はついでみたいな編集になっているが、もちろんこちらも聴き応えじゅうぶん。
ピアニストたちの素晴らしさについては、言わずもがな。


「野ばら」 アメリング、ボールドウィン
「糸を紡ぐグレートヒェン」 アメリング、ボールドウィン
「さすらい」 スゼー、ボールドウィン
「涙の雨」 スゼー、ボールドウィン
「アヴェ・マリア」 アメリング、ボールドウィン
「ミューズの子」 アメリング、ヤンセン
「春の信仰」 スゼー、ボールドウィン
「魔王」 スゼー、ボールドウィン
「音楽に寄せて」 アメリング、ボールドウィン
「水の上で歌う」 アメリング、ヤンセン
「菩提樹」 プライ、サヴァリッシュ
「あふるる涙」 プライ、サヴァリッシュ
「春の夢」 プライ、サヴァリッシュ
「子守歌」 アメリング、ボールドウィン
「ます」 アメリング、ヤンセン
「夕映えの中で」 スゼー、ボールドウィン
「春のあこがれ」 アメリング、ボールドウィン
「セレナード」 プライ、ムーア
「夜と夢」 アメリング、ボールドウィン

1961~1984年の録音。





katsudon


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Comment

こんにちは〜 - rudolf2006

吉田さま こんにちは

「カツ丼」だけで小説を書くというのは凄いことですね〜、吉田さんは本当に面白いものを探してこられますね〜
下の写真はカツ丼ですか??

美味しいところ取りの歌曲集
良いかもしれませんね〜、実際、全曲を聴くよりは美味しいところだけ聴きたいものもありますし、また聴きたいときもありますしね〜

野球行かれていますね〜
ヤクルトは今一位でしたっけ、いつの間にか一位ですね
楽天は、野村さんの頃がやはり面白かったような気がしますね〜。ちょっと今の監督はね〜爆〜

▼・。・▼
2011.06.14 Tue 15:39 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

「カツ丼」、ストーリーは荒唐無稽なのですが、かつ丼の描写がなんともうまそうな小説です。
思わず作ってみました。
この写真ではハッキリしませんね(笑)

アメリングを久々に聴きました。やはりいい歌手だし、シューベルトに合っていると改めて感じました。
スゼーとプライもいいですね。スゼーの「水車小屋」、全曲を通して聴いてみたいものです。

ヤクルトは一位です。安定しています。さきほど、交流戦の優勝が決まりました。不思議にパリーグが強いんですね。
楽天はいい選手がそろっていますが、オトモダチで固めた首脳陣はどうなのかと…。
2011.06.15 22:37

アメリングのシューベルト - アルトゥール

吉田さん
おはようございます。
アメリングのシューベルト、ボクも大好きです。80年代の国内盤が3000円以上した時代に4枚ほど買い求め、今でも時々それを聴いています。仰るとおり可憐で、清純で、シューベルトとよく合っていると思います。
アメリングは当時は人気があったのに、今は話題にならなくなりましたね。
今は女声のシューベルトというと、誰なのでしょうか?バーバラ・ボニーがいますけど、録音が量的に少ないみたいですし…。
2011.06.19 Sun 05:53 URL [ Edit ]

Re:アルトゥールさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

アメリングのシューベルトはいいですねえ。
昔から存在は知っていたのですけれど、キチンと聴いたのは初めてです。これからも聴き続けていくことになりそうなCDです。

今は女声のシューベルト、ボニーと、あとシュトゥッツマンくらいしか聴いていません。これぞという人は、一時期に比べると少なくなったような気がしなくもありませんね。
2011.06.19 22:35

シューベルト歌曲集 - neoros2019

シューベルトのCD収集を始めて、わたしもDGGの歌曲オムニバスを買い求めたばかりです。
芳野さんのシューベルト欄のすべてを手繰って見ました。
冬の旅はどれを求めるか?白鳥の歌は?
色々参考にさせていただきます。
それにしてもこの年齢になると、ベートーヴェン、シューベルトの室内楽の響きがまるで違ったカタチで身体に染み渡るのを自覚せざるをえませんね。
2017.10.28 Sat 20:55 URL [ Edit ]

neoros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

恐れ入ります。
シューベルトの歌曲はわりと若い頃から好きだったのです。ただ、「冬の旅」が面白く聴けるようになったのは、ここ10年くらいのことでしょうか。
最近はベートーヴェンの弦楽四重奏に凝っています。いろいろな団体の演奏を聴いています。後期はもちろんいいけれど、中期や初期も素晴らしいものです。
おっしゃる通り、歳を重ねることでようやくわかってくる音楽はあるものですね。
2017.10.28 21:50
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