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"グリーグを愛す"、ムストネン、"ピアノ協奏曲"

2014.02.16 - グリーグ

ma




伊熊よし子の「グリーグを愛す」を読む。

本書は、著者がグリーグの生活したベルゲンに赴いてのエッセイと、作曲家の生涯、そして作品紹介の3章に分かれている。
文章からはフィヨルドや街なみの美しさがにじみ出ており、寒いのだろうけど、思わず行きたくならずにはいられなくなる。

ところどころに挿入された写真もいい。グリーグが作曲をした家は、こんなに小さな木造だったのか。彼はこんな白夜の世界に生きていたのか。

ベルゲンは北欧でも有数の漁港でもある。グリーグは言う。
「波止場ならではの匂い、港にあがったタラの匂いは私を活気づけ、胸がわくわくするほどです。そのすべてが私の音楽を形成しています。タラの匂いが音楽に込められているといっても過言ではありません」。
これからは、タラチリを頂くときに、グリーグに思いを馳せるだろう。

付録にCDがついており、なかでもシュトゥットが指揮する「ホルベアの時代より」は素晴らしい。
全体を通してこれは、著者のグリーグに対する愛情がストレートに溢れた素敵な本だ。








ムストネンのピアノで、グリーグのピアノ協奏曲を聴く。

彼は1967年にフィンランドで生まれたピアニスト。名前は聞いていたが、演奏を聴くのは初めて。
要所要所にスタッカートを取り入れて、歯切れのいい音楽を作る。ことに高音は澄み切っていて、上のくだりではないが、北欧のひんやりとした空気を連想させる。
テクニックに不安はまったくなく、すみずみまで目の行き届いた丁寧な演奏を繰り広げる。

1楽章のカデンツァでは弱音の厚い響きを巧妙に操って、なかなか深く内省的で、心に沁みるものがある。
2楽章は冬。家のなかに籠って、しんなりと佇む感じ。
終楽章は、ムストネンのリズム感がはちきれんばかりに生き生きしている。元気はいいが、やりすぎない冷静な目もある。計算された抑制。

ブロムシュテットの指揮もいい。
1楽章の3分17秒あたりでピアノにファゴットが重なるところ、そして8分18秒あたりからのホルンの音色には、感涙しそうになった。


オリ・ムストネン(ピアノ)
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
サン・フランシスコ交響楽団


1994年5月、サン・フランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホールでの録音。








ma


魚市場。








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Comment

とても個性的なムストネン - yoshimi

こんばんは。
ムストネンは作曲家でもあるので、他人の作品の演奏も個性的ですね。
それに、リサイタルではソロ演奏であっても楽譜を見ながら弾いていたり、腕を回転させながら弾く演奏姿も独特です。

彼の奏法は特異だと思いますが、バッハからショスタコーヴィチなどの現代音楽にいたるまで、一貫してチェンバロ的なノンレガートを交えて弾くのは、今も昔も彼だけでしょう。
この奏法は手指にかなり負担がかかるでしょうし、音の粒を揃えるのが大変ですから、ムストネンの技巧はとてもレベルが高いと思います。

このアルバムは試聴しただけですが、彼のシャープでクリアな音色だと、グリーグは北欧風のクールで澄んだ透明感が出ますね。
ショパンの方はちょっとコミカルな感じに聴こえる部分もあるかも。

ムストネンの録音なら、バッハとショスタコーヴィチを一緒に録音した『前奏曲とフーガ』が有名です。
他にも多数録音がありますが、そのなかではヒンデミット作品、ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲全集集》、《ディアベリ変奏曲》、レスピーギの《ミクソリディア旋法のピアノ協奏曲》などが面白いと思います。
2014.02.17 Mon 22:18 URL [ Edit ]

とても面白い! - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。
ムストネンは作曲家もするのですか。このCDのライナー・ノートで、音楽の演奏についての講釈を語っていたので、タダモノではないとは思っていました。
仰るように、このグリーグ、そしてショパンもノンレガートを基軸にした、ユニークな演奏です。
ショパンについてここでは書きませんでしたが、なんというか、従来のショパン演奏のような、さまざまなロマンティシズムへの試みとはかけ離れたような、いい意味で機械的なピアノが印象に残りました。

>ムストネンの録音なら、バッハとショスタコーヴィチを一緒に録音した『前奏曲とフーガ』が有名です。

実に興味深い。ディアベリももちろん。これから注目したいピアニストです。
2014.02.18 20:33
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