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ズスケ四重奏団のベートーヴェン「弦楽四重奏曲第14番」

2010.06.13 - ベートーヴェン
  
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ズスケ弦楽四重奏団


名越康文の「心がフッと軽くなる『瞬間の心理学』」を読む。
メンタルヘルス系の本はじつに多く出回っているが、よいものは少ない。当たり前のことばかりを延々と書いているので最後まで続けるのを断念するようなものだったり、通して読んだとしても読み終えた瞬間に読んだことすら覚えていないようなものが大半だ。
そんななかで、この本はいくつかの示唆に富んでいる。
「ブルーマンデー症候群」は、休日の楽しかった時間への執着から起こるストレスだと仮定する。せっかく休日に癒された心の疲労は、そのストレスに差し引きされて解消していないことになる。日曜の夜になると、そうしたモヤモヤした思考がわいてきて、頭の中を暴走する。その暴走をいかに抑制するか。
夜寝る前に、5分程度、目を閉じて集中する。いろいろな思考の断片が浮かんでくるが、それを自分で抑えて「今、ここ」の状態を冷静に見つめられる集中力がついてくれば、自分の心のかなりのところをセルフコントロールできるという。
と、こうして抜粋してもいまひとつピンとこないと思うが、基本は「集中」することであり、それは難しいことではあるが、ひとつひとつの行動を意識化することが肝要であるらしい。
それは具体的にはどうやったらいいのか、手順を具体的に書いている。
今晩から試してみようかな。


ベートーヴェンの後期の四重奏曲は、古典の形式の枠をはみ出るような音楽になっているが、なかでもこの14番は破格の規模を持つ。
なにしろ7楽章だもの。ハイドンにも数の多い楽章をもった曲があったような気がするが、この曲における後味の微妙さはハイドンのそれとは、ちょっと違うように感じる。この曲は、楽章のつなぎがなんともあいまいに聴こえるところが人を食ったようだし、それぞれが違う生き物のようにヌラリヌラリと、あるときはバシバシと怪しく蠢いている。
とりとめがないから、どういうアプローチがよいのかは、過去の演奏の傾向から感じてみるしかない。
そういう観点から思うと、ズスケが率いる四重奏団は、この分裂的破壊的音楽に対して、ど真ん中ストレートを中心に組み立てた配球で迫っている。
松脂の飛び散るような弦の音がじつに生々しくて、この響きだけでも一聴の価値がある。さらに、ヌラリ音楽を奏するときのやるせなさや、バシバシ楽章に対する整った激しさのコントラストがはっきりしている。作曲者はこれを書いた当時、世の中について諦観していたのか、もしくはいきり立っていたのか。
おそらく両方だったのじゃないかなと、サッポロ黒ラベルをぐびぐび呑みつつ妄想するのだ。

カール・ズスケ(vn)
クラウス・ペータースカール(vn)
ハインツ・ドムス(va)
マティアス・プフェンダー(vc)


1976年、ドレスデン・ルカ教会での録音。

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Comment

無題 - neoros2019

この吉田さんの記事をみて、ハテ?ベルリン弦楽四重奏団のベートーヴェンは何番を所有していたのかレコード棚を確認してみたら7枚、ドイツ・シャルプラッテン1000円盤シリーズで全部揃っていました(笑、驚?)
4番、15番など取り出して1年に数回ぐらい聴くことがありますがじっくり今までまとめて全曲聴いてこなかったですね
ベートーヴェンは内田/ザンデルリンクの全集から
コンチェルト3番と4番を聴きなおして感心したところです
2010.06.14 Mon 08:16 [ Edit ]

無題 - neoros2019

追伸:吉田さんもサッポロ黒ラベルなんすか?
わたしはアサヒやキリンを飲めといわれたら適当に飲んでしまいますが、毎日家庭での夕食前の1本は黒ラベルという習慣がここ10年以上続いてます
2010.06.14 Mon 08:22 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

ズスケの全集をお持ちですか。ワタシはこれしかもっていないのです。シャルプラッテンの1000円盤、もっと買っとけばよかった…といいつつも、後期を面白く聴くようになったのは最近なのです。
この14番を聴く限りでは、ズスケのベトはよいですね。

ビールと名のつくものはみんな好きですが、あえて言うと、
サッポロ黒ラベルか、キリンラガー、もしくは一番搾りです。
もっとも、目隠ししたらスーパードライとの違いもきっとわかりません^^
2010.06.15 12:51

無題 - 木曽のあばら屋

こんにちは。
私もサッポロ黒ラベルに反応。
好きです、このビール。
独特のコクがある・・・ような気がします(?)。
でも近くのスーパーには置いてないところが多くて苦労します。

あ、ズスケ・カルテットのベートーヴェン、
私もシャルプラッテンの100円盤で揃えました。
2010.06.14 Mon 20:31 URL [ Edit ]

無題 - 木曽のあばら屋

すみません。
上の投稿、もちろん「1000円盤」の間違いです。
100円では買えません。
2010.06.14 Mon 20:32 URL [ Edit ]

Re:木曽のあばら屋さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

黒ラベルいいですね。これが出てくるとラーメン屋には一目置きます。
メーカーでいえば、サッポロ、キリンが好みです。あと、モルツもなかなかです。スーパードライはあまり呑みませんが、最近これを出す店が多いですね。もちろん、出されればグビグビ呑みますけれど^^

木曽のあばら屋さんもズスケお持ちなのですね。いいアンサンブルだし、録音も落ち着いていて気に入りました。
2010.06.15 12:58

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

名越さんは一時期、テレビによく出ておられましたね〜。精神科医だったと思うのですが〜。人間、それぞれなので、一般的に言うのが難しいのかもしれませんね〜。月曜は仕事に出かけるのが面倒ですね〜。今年は月曜が休みで、気が楽ですよ、爆〜。

ズスケ・カルテットのベトベンの全集、これは一枚ずつ集めました。今、14番を聴きながら、コメントを書いています。この曲は、「大フーガ」と並んで、大きな峰ですね〜。ズスケ・カルテットの演奏は、ヨーロッパ、ドイツの伝統に裏付けられたものだと思いますね〜。落ちついて聴ける演奏ですね〜。
ビールはオリオンの生が好きですね〜、沖縄で飲む一杯が最高です〜。

(*´ω`*)
2010.06.15 Tue 18:07 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

名越さんは内田樹との対談本があるそうですが、まだ読んでいません。内田が選択したヒトなら信頼できそうかな。
この本、軽いうつ時の具体的な対処が書かれていて、じっさい効果があります。メンタルヘルスの本は、だいたいがろくでもないものですが、これはなかなかの本です。
rudolf2006さんは月曜は休みですか。いいなあ!

「大フーガ」と並んで、大きな峰、なるほど。この曲においての終楽章は、ただならぬ妖気が漂います。ズスケ、いい演奏です。

オリオンも良いですね。たまーに呑みます。独特の線香くささ(というたとえが正確かどうか…)がいいですね。異国の香りがします。
2010.06.16 22:10
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