グスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ楠木新の「会社が嫌いになっても大丈夫」を読む。
大手の会社に所属し同期のトップを走ってゆくが、40代後半になり突然の鬱に悩まされ3度の休職を経験した著者。
現在は会社勤めを続けながら、大学の非常勤講師や著作を通して「会社学」を発信している。サラリーマンは会社だけではなく他の世界にも目を向ければ視野が広がる、とはよくいわれるが、著者は実際に多くの勤め人にインタビューを重ねて、視野の広がりかたを具体的に説く。
仕事が順調なときはかえって何も考えないものだ。不調なときにどんな手を打つかが肝要。そうなったときに、今の仕事と折り合いをつけるのか、他の世界に活路を見いたすのか、もしくはこの著者のように二足のわらじを履くのか。
仕事がずっと好調にいくわけはないのである。だから重い腰を上げて、会社以外の世界にも常にアンテナを張っていたほうがよいわけナノダ。
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ。所属できるのは、25歳までのとされているとのこと。
小さなヴェネチアが語源とされている国は、貧富の差が大きいという。このオケを構成しているのは主に「富」の子どもたちなのだろう。貧富の差はまさに教育にも如実に表れているといったところか。エリート教育万歳!なのかな。
ドゥダメルといえば、先日に堂々お茶の間に登場していた。ロス・フィルの音楽監督就任披露コンサートである。
あれは素晴らしい「巨人」だった。若々しい色気をたっぷりと滴らせた芳醇なマーラー。ロス・フィルも健在。ライヴであることを考慮したら、メータやジュリーニの時代に負けないくらいか、ちょっと上回っているのじゃないかと思うくらいだった。
シモン・ボリバルも技術では負けていない。実に高性能で、この難曲においても危なっかしいところはまったくない。ことに、3楽章においてのホルンの力量はスゴイものだ。アマオケで、これだけの高い技巧を聴かせるところは、世界を見渡しても、そう多くないのじゃないかな。
欲をいえば、ロス・フィルのような匂いが欲しいとも思うが、そんなことを言ったらバチがあたるかもいれない。
ドゥダメルの指揮は、大枠はオーソドックスでありつつ、枝葉にところどころ味をつけたもので、こまめに気を利かせている。
アダージェットはいささか作りものめいた気がしないではないが、情感をたっぷりと湛えている。
フィナーレはアバドを思わせる快速テンポで進んでいき、軽やかな歩調でスマートに、かっちょよく締めくくられる。
2006年2月、カラカスでの録音。
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