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R・シュトラウス 「メタモルフォーゼン」、「4つの最後の歌」、「オーボエ協奏曲」 ジンマン指揮 チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
ヨーロッパの没落といえば、貴族社会の終焉という抽象的な社会現象を指す場合が多いが、この「メタモルフォーゼン」は、第二次世界大戦で壊滅に瀕したドイツの、物理的かつ精神的な崩壊を目にした作曲者が祖国を悼んで作ったといわれている。
音楽は、全体を支配する動機になっている「英雄」の葬送行進曲のパロディから始まり、終始沈鬱であるが、重層的に折り重なる弦の響きは、熟しきった果実のように甘美であり、この曲をドイツ・ロマン派のひとつの終焉だとする意見もうなづける。
曲の味わいは、これより半世紀ほど前に作曲されたシェーンベルクの「浄夜」の弦楽合奏版にとても似ていると思う。長さといい雰囲気といい、まるで兄弟のようだ。もっとも、「浄夜」はもともと弦楽六重奏のための音楽だから、R・シュトラウスのほうがずっと多彩に書かれている。
「メタモルフォーゼン」は23の弦楽器からなる弦楽合奏曲で、23のパートがあるから楽譜も23段になっているらしい。
大オーケストラなみであり、こうなると指揮も難しいに違いない。R・シュトラウスの晩年の傑作のひとつであるのに疑いはないが、意外に録音が少ないのは技術的に難しいからだろうか。
この曲を聴くのは実に久しぶり。以前、カラヤンとベルリン・フィルとのものを発売直後に聴いたはずだから、CDになってからは初めてかもしれない。
ジンマンがチューリヒ・トーンハレ管弦楽団を振ったこの演奏、期待以上のすばらしさだった。
背筋がゾッとする部分も何箇所かあった。弦楽合奏という編成でありながら、こってりとした重厚な味わいがあるのは、パートが細かく分かれていることもあるのだろう、それを指揮者はとても丁寧に紡ぎあげている。
この曲を聴くのにぴったりなのは、やはりフルボディの赤ワインですね。
ドイツの没落を眼前にした作曲者に思いを馳せながら、一杯。PR
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