ドミンゴのグスターヴォ、カラヤン指揮ウイーン・フィル・他の演奏で、ヴェルディ「仮面舞踏会」を聴きました(1989年、ウイーン・ムジークフェラインザールでの録音)。
カラヤン最晩年の演奏。
舞台は馴染みあるボストンではなくスウェーデン。オリジナル版とのこと。でも一聴して、音楽としてはそれぞれ大きな違いは見当たらないかな(たぶん。。)
歌手はまずクイヴァーのウルリカ。陰りのある声には古い井戸のような深みを感じさせ、なおかつ初春の山のような広がりがある。この歌唱を聴くだけで、当録音を聴く価値があると思います。
バーストウのアメーリアは、いくぶんくぐもった声であるから、そこは好き嫌いがあるのだろうけど、ときおりみせる、滝のように細くつながりながら最高音に至るところの繊細な魅力はなかなか捨てがたい。
グスターヴォのドミンゴは横綱相撲。王様のたっぷりとした品があります。ラストがそうであるように、とても潔くもある。
レナートのヌッチもまた高潔な歌いぶり。原作では伯爵なのですね。なるほど、グスターヴォとレナートのこのような佇まいにおいて、この演奏がオリジナル版に典拠していることが(こじつけかもしれないが)わかるような気がします。
カラヤンのオーケストラは重厚で恰幅がいい。ここぞというときのドスがたっぷりと効いている。ただ、重厚というよりはいささか重いように感じます。1970年代後半に、ジュリーニがウイーン・フィルを振った「リゴレット」に響きが似ているような。
ドイツ・グラモフォンがウイーン・フィルを起用したヴェルディのオペラは、このような音色になるのかな。他の演奏も聴いてみたいものです。
全体を通して、立派な演奏であることは疑いありません。
リッカルド(グスターヴォ3世):プラシド・ドミンゴ(テノール)
レナート(アンカーストレーム伯爵):レオ・ヌッチ(バリトン)
アメーリア:ジョセフィーン・バーストウ(ソプラノ)
ウルリーカ:フローレンス・クイヴァー(メッゾ・ソプラノ)
オスカル:スミ・ジョー(ソプラノ)、他
ウィーン国立歌劇場合唱団
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