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ヴォイト、モーザー、ティーレマン、"トリスタンとイゾルデ"

2020.07.27 - ワーグナー

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ヴォイトのイゾルデ、モーザーのトリスタン、ティーレマン指揮ウイーン国立歌劇場管弦楽団・他の演奏で、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を聴きました(2003年5月、ウイーン国立歌劇場でのライヴ録音)。

ティーレマンが振るシンフォニーを初めて聴いたのは、もう何年も前のこと。ピンときませんでした。ベートーヴェン2番、ブルックナー8番、ブラームスは1番。
激しくうねる音楽は新鮮と感じた半面、テンポの変化が肌に合わないのか、なんだか居心地が悪くなった。それに比べると、来日公演で聴いた「アルプス交響曲」は面白かった。でも、シュターツカペレ・ドレスデンのコンディションがいまひとつで、感動には至らなかった。

そんななか、出会ったのが「ローエングリン」。昨年のバイロイト中継でした。ちょい聴きのつもりが、出だしの1分くらいでグイと引き込まれ、最後までお付き合いすることに。あれは、いままで聴いた「ローエングリン」のなかでも出色の演奏だった。
そうか、私にとってのティーレマンはワーグナーなのか。遅まきながら気づき、そしてこの「トリスタン」を購入した次第。

ティーレマンの指揮は大柄でふくよか。それでいて劇的迫力に富んでいる。例をあげると、いわゆる山場に向かっての瞬発力の強さ。1幕のラスト、および2幕の愛の交歓後半の転調においての沸騰力は、背筋が痺れるほど。
オーケストラは、とりわけ弦楽器の音色がいい。手のひらに吸いつく女の肌のように、きめ細かく妖艶で、潤いがある。
ヴァイオリンは対抗配置と思われ、いくつかの場面で効果的。

歌手は、まずヴォイトのイゾルデ。力強くて劇的。ひきつるように高音を出すところ、タイプは全然違うけどルチア・ポップを思わせる。声そのものは、とりたてて美しいとは感じないものの、陰影が深い。その味で勝負しているよう。
ラングのブランゲーネは終始、切羽詰まった表情で、役柄に合っているように思う。風格に加えて粘りを感じさせるし、イゾルデとの組み合わせはいいと思います。
モーザーのトリスタンは、柔らかくて、詩情豊か。もう少し声の透明感だとか先鋭的なところがあってもいいような気もするが、これは好み。
ウェーバーのクルヴェナールは恰幅よく呼吸が深い。丸みのある輪郭に安定感あり。

全体を通して、重量感のある演奏でありました。


イゾルデ:デヴォラ・ヴォイト
トリスタン:トマス・モーザー 
マルケ王:ローベルト・ホル
クルヴェナール:ペーター・ウェーバー
ブランゲーネ:ペトラ・ラング
メロート:マルクス・ニミネン
牧童:ミハエル・ロイデル
船乗り:イン・スン・シン
若い水夫:ジョン・デッキー
合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
























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