ワーグナー 「さまよえるオランダ人」 ショルティ指揮シカゴ交響楽団洪自誠(守屋洋訳)の「菜根譚」を読む。
解説によれば、菜根譚は儒教の影響が強いものの、アンチテーゼ的な道教の影響も無視できないと言っているが、中身は説教くさく、やはり儒教が強いんじゃないかという印象だ。
さまざまな実業家たちが絶賛する本書だが、内容は「どうしたらうまく世の中を立ちまわれるか」ということだ。いわゆる処世術の教えである。
ただ、それだけならば他にもいろいろな本を数えることができるが、この本で印象的なのは文章の美しさである。処世というものを、ことごとく花鳥風月になぞらえているあたりがスゴい。本来は陰惨な俗世間が、あたかもさわやかな事象であるように思える。
思想そのものよりもむしろ、卓越した文章(翻訳)のほうに魅力があるように思う。そういう意味で寝床のわきに置いておいて損はない。
未だ就職活動中なのに、ショルティのワーグナー・ボックスを買ってしもうた。
このなかで重複するのは「オランダ人」のみで、しかもLPなので買う値打ちはあると思った次第。
思えば、最初に買ったオペラのLPがショルティの「オランダ人」だった。30年以上前のことである。
今回、実に久々に聴いたが、おおまかな印象はLPの当時と同じか、それ以上によいと思った。
聴きどころは、なんといってもシカゴ響。ビンビンと伸びあがる金管、ピーンと締まった弦、粒だったティンパニ、そしてグシャっと潰れるドラ。
メタリックな響きが最高なのである。ショルティはシカゴ響とのオペラの録音は比較的少ないけれど、それがいささか惜しいと感じるほど、改めてシカゴ響のポテンシャルの高さを感じたのである。シカゴでワーグナーの再録音は「マイスタージンガー」(まだ聴いていないけど)だけだったが、もっとあればよかったのに。
歌手ではタルヴェラがいい。ドス黒い海の底のようなバスを聴かせてくれる。フットワークもある。
このショルティのワーグナー集、今後も大いに期待する。
ノーマン・ベイリー(バリトン:オランダ人)
ジャニス・マーティン(ソプラノ:ゼンタ)
ルネ・コロ(テノール:エリック)
マルッティ・タルヴェラ(バス:ダーラント)
アイソラ・ジョーンズ(メゾ・ソプラノ:マリー)
ヴェルナー・クレン(テノール:舵取り)、他
シカゴ交響合唱団
1976年、シカゴ、メディナ・テンプルでの録音。
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