忍者ブログ

"黄金虫"、レーゼル、"ハンマー・クラヴィーア"

2016.06.12 - ベートーヴェン

ma



エドガー・アラン・ポー(巽孝之訳)の「黄金虫」を読む。


「もしも君のほうでどうにか都合が付くようでならば、どうかジュピターと一緒に来てくれたまえ。ぜひとも。ぼくは今夜にでも重要な仕事のことで君と会いたいのだ。これは最重要の仕事なのだ。」


これは、ポーの暗号小説。文学史上、最初の暗号小説とされる。そして、たんに暗号を解くだけではなく、いくつかの仕掛けが施されている。
登場人物は、探偵役のルグランとその使用人であるジュピター、そして語り手の3人のみ。それぞれの描写は彼らの人間臭さをじゅうぶんにあらわしていて、それがお話の妙味になっている。
「最重要の仕事」の意味は、読んでいくとわかる。まったく、これほど重要な仕事もないもの!

暗号は、以下の通り。


53‡‡†305))6*;4826)4‡.)4‡);806*;48†8
¶60))85;1‡(;:‡*8†83(88)5*†;46(;88*96
*?;8)*‡(;485);5*†2:*‡(;4956*2(5*?4)8
¶8*;4069285);)6†8)4‡‡;1(‡9;48081;8:8‡
1;48†85;4)485†528806*81(‡9;48;(88;4
(‡?34;48)4‡;161;:188;‡?;


なにがなにやらサッパリわからないものが、ルグランの手によって解き明かされるくだりは、臨場感たっぷり。








ペーター・レーゼルのピアノで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ29番「ハンマー・クラヴィーア」を聴く(1979年5月12月、ドレスデン、ルカ教会での録音)。

レーゼルのピアノ、生を一度だけ聴いた。ブラームスとシューマンとシューベルト。硬質な響きが清廉であり、淡いロマンがそこかしこに立ちのぼるピアノだった。
テクニックの高さを含め、現代最高のピアニストのひとりだと思う。

その彼がまだ若い頃に入れたベートーヴェン、大きな期待をした。果たして、予想通りの出来。

1楽章は、やや遅めに、じっくりと弾いている。細かなパッセージがひとつひとつハッキリと聴こえるあたりはレーゼルらしい。そしてフォルテシモでも、音はピーンと張り詰めていて透明感がある。

2楽章を闊達に駆け抜け、アダージョ楽章はやはり比較的ゆっくりとしたテンポ。冬の空のようにクッキリしたピアノは、ケレン味がいっさいなく、明晰。とりわけ、高音域が鮮やか。仄かな抒情が匂い立つ。

ゆらり始まる4楽章は、妖気が漂う。いかにも、ただでは済まない雰囲気。実際、この演奏の白眉であった。
フーガが始まる。快速なテンポ。すべての音が、屈託なく、山の湧水のように自然に溢れ出ている。濁りのない音は、快感ですらある。
いったん落ち着いてから、また激しいフーガが再開されると、切れ味にいっそう拍車がかかる。めくるめく音世界が展開され、痺れないわけにいかない。
ラストの和音はじっくり溜めて弾き切る。
名演である。






ma
 
春。








PR
   Comment(1)    ▲ENTRY-TOP

Comment

レーゼルのベートーヴェン - yoshimi

こんにちは。

旧東独時代のレーゼルのピアノは、濁りのない硬質の音色でクールな温度感があり、引き締った淀みない演奏が特徴ですね。ベタベタしない叙情感が爽やかです。
ハンマークラヴィーアは聴いていませんが、テンペストの第3楽章はとても好きな演奏です。(この楽章、もともと好きなので)
その頃に比べると、今は色彩感が豊かになり、音に温もりもでて、演奏自体に少し柔らかさを感じます。
年をとっても、テンポはほとんど遅くならず、打鍵は正確で響きはクリアですし、淀みない流れで明晰なところは変わっていないように思います。
2016.06.15 Wed 12:34 URL [ Edit ]

目から鱗でした。 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。

若い頃のレーゼルは、室内楽以外では初めて聴いたかもしれません。
清々しくて、透明で、それでいて抑揚がある、とてもいいピアノだと思います。
昨年に彼の生を聴いたときは感動したのですが、あまり印象は変わらないかな、と感じました。
硬めのピアノの音が全体を支配していて、底からじわじわと淡い叙情が浮かび上がるところは、若い頃も現在も、変わらないのかなあ、と。
問答無用に、現代の第一級のピアニストです。
紀尾井ホールでベートーヴェンをやったチクルスを聴いてみたいです。
2016.06.15 21:49
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
カッチェン、フロマン、ブラームス"ピアノ協奏曲2番" from:Yoshimi
-11/16(Thu) -
フルニエ、フィルクスニー、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-03/18(Sat) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-02/20(Mon) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:“スケルツォ倶楽部”発起人
-02/20(Mon) -
古典四重奏団、ベートーヴェン、15,13"大フーガ" from:老究の散策クラシック限定篇
-10/30(Sun) -
最新TB
カテゴリー