大和賢一郎の「辞めるなんてもったいない!」を読む。
これは、日立製作所にSEとして勤務する著者が、会社のありがたさを語る本。10年前に発行された著書で、当時彼は20歳代の後半。その年齢を鑑みると、会社及び仕事のことをよくわかっているなあと感心しないではいられない。いまは日立を辞めて独立しているようだ。
内容は、個人事業主と比べて会社員はいかに恵まれているかを説いている。わたしは両方の経験があるけれども勉強になるところがある。
会社での拘束時間は束縛ではなく自己管理ツールと考えるとか、会社の生活は自分のライフワークのひとつの事業部にすぎない、などなかなか面白い考えだと思う。
ただ経験上、税制優遇は個人事業主のほうが断然大きいと思う。600万以下程度の年収であれば、税務署は領収書を請求しないから。
アンスネスのピアノで、シューベルトのピアノ・ソナタ19番を聴く。
ナットが弾くベートーヴェンの「創作主題による32の変奏曲」について書いたときに、このテーマはシューベルトの19番に引用されているという指摘を、FB仲間から頂いたので改めて聴いた。
確かに、1楽章の最初のメロディーは類似している。調性も同じハ短調。
この曲はシューベルト最晩年の作品で、俗にいう「後期三大ソナタ」のひとつ。20番、21番は明るい調性ながらも浮世離れした佇まいが濃厚であるのに対し、19番はあまらさまに陰鬱である。そのなかで2楽章だけは長調。最初のテーマには一筋の光、みたいな救いがある、ように感じる。中間部は暗い。
アンスネスのピアノはここでも好調。ときには山脈のように力強く、ときには羽毛のように繊細。シューベルトの嘆きにたいして、親しみを込めて手を差し伸べているようだ。
それは終楽章に顕著。過剰なまでの苛立ちをアンスネスは、ふうわりと包み込むように、弾ききっている。柔らかな高音がことのほか美しい。
2006年4月、サフォーク、ポットン・ホールでの録音。
夜。
在庫がなく、ご迷惑をおかけします。
6月上旬に重版できる予定です。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR