エドガー・アラン・ポー(巽孝之訳)の「赤き死の仮面」を読む。
タイトルは黒死病(ペスト)と対になっているかのよう、疫病をテーマにした短編。ポーが生きた1831年にはボルチモアで、1832年にはフランスでコレラが流行しており、フランスではその真っ只中に舞踏会が催されており、それがこの作品のヒントになっているらしい。
「赤き死」なる疫病が国を席捲する。そんななか、プロスペロー国王は巨大な城郭を外界から完全に遮断して隠遁する。城のなかには大量の食物と酒、そして即興詩人やバレエ・ダンサー、演奏家を囲い、毎日のように遊興にふける。
ある日、城郭で仮面舞踏会が催される。そこに、招かれざる客が来訪し事件は起こる・・・・・・。
城郭の内装の描写が凄い。ここは「アッシャー家」に似て激しく豪華絢爛であり幻想的。この描写があってこそラストが冴える。
ゼルキンのピアノで、シューベルトのピアノ・ソナタ21番を聴く。
これは1977年のカーネギー・ホールでのライヴ録音であり、1975年9月に収録されたセッション録音から2年と少ししか離れていない。
そのせいか、ゼルキンのこの曲に対するアプローチは基本的に変わっていない。ただ、録音状態はこのライヴのほうが上であるので、より聴きごたえがある。
残響をやや多めにとっているせいで、ゼルキンのピアノはCBSのセッションに比べて柔らか。こちらのほうが生の音により近いだろうと想像する。
件の2楽章第2主題はわりと大きく音量を揺り動かしている。瑞々しい音がはち切れんばかりに溢れる。若々しい覇気は豊かな生命力に富む。時にゼルキン74歳。この年齢だからこそ、純度の高い若さの喜びを弾き切れるのかもしれない。
1977年12月、ニューヨーク、カーネギー・ホールでのライヴ録音
夕餉の支度。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR