ハンス・リヒター・ハーザー(Pf) ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団林芙美子の「放浪記」。
「この本のいちばんの魅力は、言葉のおもしろさ、日本語の底力、をたっぷりと味わえるところだと思う」、これは江國香織が書いた帯。まったく同感。たったいま生まれたばかりのような新鮮な言葉は、酔っ払ってぐだぐだの体にもすうっと心地よく沁みとおる。
尾道から上京した芙美子は、女給や工員など職や住処を転々としながら、しっかりと生きている。この日記がその証。生活はけっして楽ではなかろうが、リズムのいい文章を読んでいると、ほんとうは楽しいんじゃないかと思えるくらい。
12月のある日の日記から。おでんの屋台でも出そうか、なんてことを思いつく。
「コンニャク、いいね、厚く切ってピンとくいちぎって見たい・・・・・・がんもどき竹輪につみれ、辛子のひりりッとした奴に、口にふくむような酒をつかって、青々としたほうれん草のひたしか・・・・・・・元気を出そう」
なんのことはない、おでんを食べたかっただけ。しかし、なんともうまそうだ。オヤジ、酒くれっ!
リヒター・ハーザーのボックスを聴き始めた。
1月から2月にかけて、ちっとばかしキャバクラにハマッてしまったので、新譜を買うのは久しぶりなのだ。協奏曲の指揮者が魅力的なうえに、ソナタは後期がすべて収録されているから、これは買いなのである。まずは協奏曲からモソモソと聴き始めたが、これはなかなかだ。期待できる。
堂々としていて気合いがみなぎっているオーケストラの序奏を経て、やがてピアノが入ってくると、演奏はますます熱を帯びる。リヒター・ハーザーの奏でる響きは、滑舌がいい。音のひとつひとつが力強く、どの部分を切り取っても明瞭に聴こえる。ことさら打鍵が強いふうではなさそうだが、確固たる意志みたいなものを感じる。
2楽章はさらに素晴らしい。弱音器を用いた弦がしっとりと、穏やかな海のようにたゆたうなかで、怪しい光を放つピアノが鮮やかだ。
終楽章もピアノは剛直、そして甘さは控えめ。男ばかりが出演する映画みたいに、色気はない。
ジュリーニのバックはセンス抜群。いい演奏。
1963年4月、ロンドン、アビー・ロード・スタジオでの録音。
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池袋の無料案内所で紹介された「熟女キャバクラ」の店で、20後半から40くらいの女性が勢ぞろいしています。「最近は『熟女キャバ』が流行ってるのよ」とホステスが言っておりましたがホントかな。
どうも、3年ごとくらいにハマる傾向があるようです…。
リヒター・ハーザーの選集はまだ3番しか聴いていませんが、これがよかったので、期待できそうです。キャバクラ遊びもひと段落したので、ベートーヴェンを聴いてみようかなと^^