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赤目四十八瀧心中未遂、マゼール、アルルの女

2011.04.02 - ビゼー
   
bi

ロリン・マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団


車谷長吉の「赤目四十八瀧心中未遂」を読む。
出だし近くの記述で、これは私小説であることを告白している。
「人の生死には本来、どんな意味も、どんな価値もない。その点では鳥獣虫魚の生死と何変わることはない。」
「従ってこういう文章を書くことの根源は、それ自体が空虚である。けれども、人が生きるためには、不可避的に生きることの意味を問わねばならない。この矛盾を『言葉として生きる。』ことが、私には生きることだった。」
「半」世捨て人となった主人公は尼崎に流れ着き、病気になった牛や豚の臓物を串刺しにすることで生業を得ている。背中に入れ墨のある女と関係し、ヤクザに追われて心中を図る。俺は世捨て人だとうそぶいているくせに、女への憧れを捨て去れない主人公の煩悩が、生きる矛盾である。それがなんだか、いとおしい。
陰惨な話であるが、どこか覚めていてカラッしている。そこが小説としての完成度を非常に高くしているのじゃないかと思う。


マゼールという指揮者は、時代によってさまざまに表情を変えてきたように感じる。
ワタシがクラシックを聴き始めたのは、彼がクリーヴランドの音楽監督を務めていた後期の頃なので、いまだにその時代のマゼールの「顔」が強く印象に残っている。
マゼールとクリーヴランドの大きな特徴のひとつが、メリハリの強さと鋭角的な断面にあることに異論はないと思う。
過剰なメリハリ。
それが顕著にでているのが「シェエラザード」。あまりにもキレが良い。良すぎて、すべての音がスタッカートに聴こえるほどだ。他に類をみない、孤立、いや孤高の快演である。
そういうやり方を貫きつつ、古典的な構造の綾を解きほぐすことに成功したのは、ブラームスの4番。
そして、過剰なメリハリ攻撃の集大成としてぶちかましたベートーヴェンの9番においては、堂々たるスケールまでも手に入れた大演奏になってしまった。

そして、このコンビで初めて聴いた「アルルの女」。これもいい。相変わらず、触れたら切れそうなくらいに音が短い。表情は明るくて穏やかだけど、心は静かにいきり立っている。ブーレーズじゃないけれど、「完璧への情熱」が手に取るようにわかる。セル以来の、これはクリーヴランドの伝統というべきか。この情熱は、後任のドホナーニまで引き継がれたのだった。


クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

まずは、お身内にご不幸があったとのこと
心からご冥福をお祈りいたします

阪神のとき、親戚連中は阪神間にいたのですが、幸いにも家は壊れても、亡くなった親戚はいなかったのですが、その後すぐに、叔父、叔母が続いて亡くなったですよ、やはりストレスがかかるのかもしれません。
くれぐれもお身体をご自愛ください

車谷さんの本は吉田さんに教えていただいたんです、それで「赤目」も読みました、アマ(尼崎)の昔の雰囲気を覚えているので(爆〜)、懐かしさを感じながら読みました。映画もありますよね、あれは現在に設定されていて、ガッカリしました、くれぐれもご覧にならないように、あの本の印象が薄れてしまいます;;
車谷さんの本は凄いとしか言えません、あれほど「生と死」を考えている現代の作家は数少ないかと思います。

マゼール、かなり聴かれていますね〜
吉田さんの影響か(?)、私もかなり聴いていますが、まだ良く分かりません、オペラはいずれも素晴らしいと思うのですが〜。
ブルックナーは面白いのですが、ケーゲルと比べるとケーゲルの方が面白いかなと思ったりも〜

▼・。・▼
2011.04.05 Tue 05:24 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

ご心配をおかけします。恐縮でございます。

葬儀のあと、義母と義弟は陸前高田の海岸へ、実家のあり様を見に行ったそうで、それは新聞の写真のままであったとはいえ、生で見る光景は筆舌に尽くしがたいものがあったと言っておりました。

車谷さん、相変わらず良いですね。
この「赤目」はとても良い小説だと思いました。尼崎(アマというのですね)の町の雰囲気、そしてやさぐれた男たちやアヤちゃんの魅力が生き生きと伝わってきます。映画はだめなのですね。封印しますか^^

マゼールという指揮者、クリーヴランド時代をよく聴きます。どれもメリハリが強くて面白いと思います。
ブルックナーはBPOとの8くらいしか聴いていません。バイエルンとのものも聴いてみたいです。
2011.04.06 22:09

無題 - Yuniko

マゼールの「アルルの女」はLPですが私も持っていますよ。遠い実家に置いてきているので、もう30年近く聴いていませんが。
「アルルの女」は中1の音楽鑑賞で聴きました。地元でリコーダーアンサンブルも主催している音楽の先生が、オーケストラスコアの読み方を教えながら聴かせてくれました。
それまでは音楽については漠然と「歌ったり楽器したりは退屈だけど、音楽鑑賞はおもしろいな~」という程度の印象だったのですが、「アルルの女」とその管弦楽スコアで、クラシック音楽の美しさとおもしろさに一気にはまってしまいました。
放課後、脳内が興奮状態のまま市内のレコード屋に行き、小遣いはたいて購入したのがカラヤン&ベルリンpoの70年代録音の盤でした。「カルメン&アルルの女、ペール・ギュント&十字軍の兵士シーグル」という2枚組でした。急いで帰宅してこれを聴き、もう完全にノックアウトでした。
学校の音楽鑑賞でクラシックに目覚め、カラヤン指揮の通俗名曲でクラシックに取り憑かれるなんて、全くのお決まり路線ですが、何の後悔もしていません。
とまあ、そんな思い出の曲が「アルルの女」です。
マゼールの「アルルの女」は私の購入した2枚目の「アルル」です。受験が気になり始めた高3の春のことでした。カラヤンの壮麗壮大ドラマティックな「アルルの女」を聴きなじんだ耳には、ずいぶん異質に聞こえました。なんかパキパキしているというか、響きが引き締まりすぎというか、窮屈というか、聴き終わったあと「アルルの女ってこんな曲?なんか違う・・・」と戸惑ったものでした(あくまで当時の感想です)。むしろ併録されている「子どもの遊び」が、子どもが無邪気に遊んでいる様子が眼前に浮かんでくるようで、素直に「いい曲だな~」と感じました。
この演奏ってCDで出ていたんですね。といってもアマゾンで調べたら、もう中古しかないようですが。
マゼールの「アルルの女」、今聴いてみると新たな発見があるかもしれません。
マゼールはコンサートのアンコールでよくファランドールを取り上げますが、これがその都度性格の異なる演奏でおもしろいです。
DVD&Blu-Rayで出ている「ニューヨーク・フィル平壌ライヴ」の「ファランドール」がオケのパワー全開の演奏で一番おもしろかったです。
2011.04.09 Sat 23:33 [ Edit ]

Re:Yunikoさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

音楽鑑賞で聴いた音楽は忘れません。「ペールギュント」とか「ウイリアム・テル」などを聴きました。中学のときの音楽教師がけっこうオタクの人で、トルコ行進曲の聴き比べをしてくれました。ホロヴィッツとへブラ-とエッシェンバッハだったことを覚えています。

カラヤンとベルリンの2枚組、ありましたね。「悲愴」と「新世界」と「田園」の2枚組(これはEMIだったのですが)を買って擦り切れるまで聴いたものです。懐かしい。カラヤン指揮の通俗名曲でクラシックにハマるのは王道ではないでしょうか^^

マゼールのクリーヴランド時代は、ホントに「パキパキ」していますね。神経質なまでの整頓ぶりが当時は気に入りました。最近、それらを聴き返してみると、やはりいいんですよ。ニューヨーク時代のもこれから聴いていきますね。
2011.04.10 17:48

無題 - Yuniko

この記事を読んで以来、気になっていたマゼール&クリーヴランド管の「アルルの女」。先日、Amazonでこの「アルルの女」のCDを入手しました。1982年の春以来、29年ぶりの再会です。
2011年4月6日の全開のレスに書いたような「パキパキ」「窮屈」といった印象はなく、弦楽器群の透明な響きがとても美しい演奏でした。そしてそれ以上に、晩夏の夕暮れのような寂しさ・はかなさを感じさせました。第1組曲「アダージェット」と第2組曲「メヌエット」の消え入りそうな音色がそう感じさせたようです。この音楽のもととなったアルフォンス・ドーデの戯曲「アルルの女」の雰囲気を描き出しているのは、カラヤン&ベルリンpo盤よりもむしろこちらの演奏なのでしょう。
若かった頃に見逃していたマゼール&クリーヴランド管の隠れた名演に目を開かせていただき、ありがとうございました。
2011.12.21 Wed 23:59 [ Edit ]

Re:Yunikoさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。
「アルルの女」は小学校か中学校の音楽鑑賞で聴いた覚えがあり、それからハマりました。カラヤンとマルケヴィッチの演奏をLPで聴いていました。飽きずに何度も聴いたので、その後はあまり積極的に聴こうとは思いませんでしたが、マゼール盤をきいてまた新たな魅力を感じました。ある意味で期待通りの内容でしたが、それを実際に耳にすると感激もひとしお。
マゼールの魅力の再発見が続いております。こちらこそ、ありがとうございます。
2011.12.22 19:02
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