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"それでも会社を辞めますか?"、ヤノフスキ、"ジークフリート"

2015.08.09 - ワーグナー

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多田文明の「それでも会社を辞めますか?」を読む。

実録・40歳からの仕事選び直し、という副題。

新書で自己啓発本を出す人は執筆家として安定した収入がある人が多いようだが、多田は実際に正社員を目指して就職活動を行ったことをルポとして描いている。そのあたり、鎌田慧とスタンスは似ているようだ。だから、信頼できる。
こうした題名の本を出すからには、執筆者自身の実体験がなければ説得力がない。たいがいの本は、雲の上から読者を見下している。勝間とか香山とか森永あたりがそう。彼女たちの本は、読むに値しない、とは言わないまでも、あなたの思惑とは、およそ見当違いの方向を指し示すことだろう。

そういう意味で、これは実際的な本。40、50歳を過ぎて仕事を変えようと思ったならば、手に取ってムダにはならないと思う。








ヤノフスキ指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏で、ワーグナーの「ジークフリート」を聴く。

ジークフリート:ルネ・コロ
ブリュンヒルデ:ジャニーヌ・アルトマイヤー
さすらい人:テオ・アダム
ミーメ:ペーター・シュライアー
アルベリッヒ:ジークムント・ニムスゲルン
ファフナー:マッティ・サルミネン
エルダ:オルトルン・ヴェンケル
森の小鳥:ノーマ・シャープ


聴きどころは、なんといっても、1幕でのジークフリートとミーメとのやりとりに尽きる。好きなんだ、ここが。
同好の加賀谷君は「ニーベルンクの指輪」の中で「ジークフリート」が一番好きだと言っていた。ワタシはこれか、「神々の黄昏」どちらをとるか迷う。
「ワルキューレ」はおそらくもっとも完成された作品であると思うが、それをとらないところが、ふたりの屈折した性格をあらわしているところだ。

1幕と言えば、ノートゥングをめぐるやりとりである。ルネ・コロとペーター・シュライアー。
録音当時、ふたりは40歳半ば。脂が乗り切っている。
コロは持ち前の美声でもってストレートな感情表現を行っている。なんといっても声そのものがいいし、深い呼吸感もある。シュライアーは役者さながらの演技でクセのある役を難なくこなしている。うまいな、この人。

ヤノフスキは落ち着いている。録音当時40歳前半であり、シュライアーやコロよりも年下である。移りゆく状況を冷静に捉え、的確に指示を出しているように感じる。リズム感がいい。
ドレスデンのオーケストラは、滋味がある。ことに弦楽器はコクがあり、練り絹を思わせる。

さすらい人はテオ・アダム。万全であり、最上級の歌を聴かせてくれる。こんなに直近に(といってもすでに30年以上前だが)、このような大歌手がいたことに感謝するしかない。
ニムスゲルンのアルベリヒもいい味を出す。

全体を通して、1980年代における最上級のワーグナーではないかと思う。


1982年2-3月、ドレスデン、ルカ教会での録音。





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休憩。





重版できました。




「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!







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