忍者ブログ

選択したカテゴリの記事一覧

ウーセのモーツァルト「ピアノ・ソナタ第10番」

2011.01.23 - モーツァルト
   
mo

セシル・ウーセ(Pf)


ロバート・ホワイティング(松井みどり訳)の「野茂英雄」を読む。
近鉄からメジャー、そしてベネズエラのリーグから再びメジャーに復活して引退するまでの歩みが、思い入れたっぷりに綴られている。
野茂の活躍なしには、イチローや松井秀喜、松坂がメジャーで活躍することはあり得なかったというのは、正論だと思う。確かに、アメリカへの門戸を広く開いたことだけでも十分に賞賛に値するということを否定しないが、野茂の本当のスゴさは、プレーそのものにあるように思う。グラウンド上での生真面目な態度(プレー中は滅多に歯を見せることがなかった)、インタビュアーへの朴訥すぎる態度、自分が不利でも言い訳をしない姿勢、そして、なんといってもトルネードから繰り出される剛速球と信じられないくらいに落ちるフォーク。これらがすべて噛み合わさった、野茂英雄の全人格がたまらなく魅力的なのである。
メジャーでの通算成績は、123勝109敗、防御率4.24。決して突出したものではないかもしれない。けれども、思い出してみよう。オールスター戦で先発して2イニングを無失点に抑えたピッチング。空気が薄くボールがよく飛ぶためにノーヒットなどあり得ないといわれたクアーズ・フィールドでのノーヒット・ノーラン。晴天の霹靂だった2度目のノーヒット・ノーラン。そして、ロイヤルズの一員として登板して完膚なきまでに叩きのめされた最後の試合。
野茂にどれだけ夢を見させてもらったかわからない。そういう人がほかにもたくさんいることを、この本を読んで改めて思い知った。


ドイツ・シャルプラッテンは東独系の演奏家を多く取り上げているので、ウーセもそのあたりの出身なのかと思ったら、南フランスの出とのこと。ピレネー山脈の麓に近くに生まれた彼女は幼いころからピアノを始めて、5歳で最初のリサイタルを開いたという。この業界に少なくない神童のひとりである。その後、ロン・ティボー・コンクールで入賞をしたことを皮切りに、ジュネーヴ国際、ヴィオッティ国際、エリーザベト王妃国際、ブゾーニ国際、ヴァン・クライバーン国際と立て続けに入賞を重ねる。まさにコンクール荒らしの様相だが、世間に広く認められたのは、70年代半ばのロンドン公演かららしい。
そんな彼女のモーツァルトは、ピシッと背筋が伸びて、線の太いもの。いくぶん硬質な音でもって、ひとつひとつの音を几帳面にカッチリと弾いていて、少しも曖昧なところがない。こういうところは東独っぽい感じがしないでもない、というのはコジツケなのだけど、これを目隠しで聴いたら、フランス出身であることはもちろん、女性によるものだと当てることは相当難しいのじゃないかと思う。ひとことで言ってしまうと、これは硬派のモーツァルト。ピンクじゃないよ(古い)。

1973年4月、ドレスデン、ルカ教会での録音。
PR
   Comment(1)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP
カレンダー
05 2025/06 07
S M T W T F S
1 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20
22 23 24 25 26 27 28
29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
河野真有美、Fantastico from:Yoshimi
-05/21(Wed) -
ポペルカ、バボラーク、NHK交響楽団 from:老究の散策クラシック限定篇
-02/23(Sun) -
ポペルカ、バボラーク、NHK交響楽団 from:老究の散策クラシック限定篇
-02/16(Sun) -
ポペルカ、バボラーク、NHK交響楽団 from:老究の散策クラシック限定篇
-02/16(Sun) -
ポペルカ、バボラーク、NHK交響楽団 from:名無し
-02/16(Sun) -
最新TB
カテゴリー