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ドホナーニのベルリオーズ「幻想交響曲」

2009.08.30 - ベルリオーズ


BER

ベルリオーズ「幻想交響曲」 ドホナーニ指揮クリーヴランド管


高田純次の「適当日記」を読む。
ある日のできごと。6月17日。

「父の日なんだって? 娘たちが小さかったころは、プレゼントをもらったこともあったね。今では、さっぱりだけど。
最後にもらったのは、10年も前になるかな。靴磨きセットをもらったんだ。
『自分で磨け』
って、ことなんだろうなぁ。
それ以降は、ほったらかしにされてるよ。
『一人で生きろ』
って、ことなのかな?」

「オレは、娘には、ある程度厳しく接してきたつもりだけどね。『親バカ』って、みっともないでしょ?
ただ、ナンパした女の子が、娘の同級生だったときには、
『この、バカ親!』
って言われたけどね。
ただ、純粋にかわいかったから、声をかけただけなのに。
人間、純粋すぎてもダメなんだね。」

電車の中では読まないほうがよい。



ドホナーニの「幻想」。
ドホナーニの日本での評価はあまり高くないようだ。評論家筋の受けはいまひとつだし、出てくるCDは軒並み廃盤になる始末。
縦の線をきっちり合わせた堅実な演奏をするので出来不出来の差はない反面、意外性に欠けるところが面白くないという見方なのかもしれない。
でも、ときどきホームランをかっ飛ばすので、この指揮者は油断がならない。
最近聴いた中では、ウイーン・フィルをバリバリ鳴らせた「中国の不思議な役人」に溜飲が下がったし、マーラーの5番ではショルティ/シカゴを上回るほどのディテイルのこだわりを見せつけられてたまげたものだ。

このドホナーニ盤、3楽章までのクールな肌触りがケーゲル/ドレスデン・フィルの演奏に似ている。
淡々とした音が冷え冷えとした空気のなかに漂う。穿った見方をすればそれを狂気ととらえることができるかもしれないが、むしろ標題を抜きにしてひたすら澄んだ音のおいしさを味わうべきだろう。
2楽章ではコルネットを使用、多彩な響きに華を添える。マゼールはCBSでもテラークでもコルネットを使用しているので、これはクリーヴランド管の伝統なのかな。
この演奏、4楽章からがもっと素晴らしい。
個々の技量と緻密な合奏、そして鋭利な切れ味でもって大変な音響効果をあげている。楽譜に書かれている全ての音符が眼前に飛翔するようだ(楽譜を見ているわけじゃないけど)。ラストのシンバルと大太鼓の溶け合う音の重量感は、これをつまみにワインを1本あけられるほどだが、そんな間もなく怒涛の終楽章に突入する。
怒りの日をチューバが奏しているうしろでゴンゴン鳴り響く大太鼓、触れれば切れそうなヴァイオリン、冷静に正確に音を刻む木管群。全部の楽器が渾然一体となって音の饗宴を繰り広げる。
大太鼓が皮を軋ませながら最終結部へ突進、オーラスはピッコロとトランペットの熱い咆哮で締めくくる。

ベルリオーズの「幻想」は録音こそ多いものの、これといった演奏が少ないように思う。
普通に演奏してもそれなりに盛り上がるからなのかな。
いままで聴いた中で印象に残ったのは、テレビで観た小澤/ボストン饗の78年の来日公演と、エアチェックしたアバド/ルツェルン祝祭管、CDではクリュイタンスとパリ音楽院管の来日公演とミュンシュ/ボストン饗(62年)。
このドホナーニ盤はその中に加わる。録音のよさを考慮すればベスト。


1989年10月、クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音。



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Comment

無題 - リベラ33

このCD持っています。買ったのは高校の頃だったと思います。以前東京にいた頃、通勤でこのCDを掛けると家を出て会社に着くまでにちょうど全曲聴ける時間でした。
この頃のドホナーニ/クリーヴランドはいいですね。同じコンビのスラヴ舞曲も気に入っています。
2009.08.30 Sun 19:51 [ Edit ]

Re:リベラ33さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

ドホナーニの「幻想」は、先週の土曜日に最寄のブックオフで見つけました。カラヤンのモーツァルトのディヴェルティメントとどちらか迷いましたが、熟慮の末、こちらにしました(いっそのこと両方買えばいいのですが)。
期待していましたがそれ以上の演奏で、満足です。痒いところに手が届く、そんな感じを受けました。
ドホナーニとクリーヴランドのコンビはよいです。スラヴ舞曲も良さそうですね。
2009.08.30 22:01

無題 - neoros2019

これは未聴ですマゼール/クリーブランドの77年盤が同時期収録されたショスタコの革命と並んで今ひとつ感銘を受けなかったんで自分にとっての
幻想のベスト盤はいまだにあげることはできません
ドホナーニ+クリーブランド+ベルリオーズ+録音レンジのダイナミックスはたしかに魅力的ですね
2009.09.01 Tue 08:14 URL [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントありがとうございます。

私もマゼールの演奏を昔に聴きましたが、いまひとつピンとくるものがありませんでした。
CBSとテラークは年代が近いせいか、よく似た演奏と思いました。
このドホナーニ盤は期待以上の演奏でした。なんでみんなこういうふうにやらないのだろうと不思議です。
2009.09.01 12:43

無題 - rudolf2006

吉田さま こんにちは

高田純次さん、良い味を出していますよね
関東のお笑いの芸人さん、それほど好きな方はおられないのですが、高田さんは昔から好きですね〜。本当に適当に生きているようで、真面目に適当に生きている姿が感動的ですらあります、爆〜。爆笑問題も好きですが〜。
ああああ、アマゾンに、この本、注文してしまいました、爆〜。

ドホナーニ、よく聴かれていますよね、いつもよく出てくるので、いずれか聴いてみたいと思いながら、まだどれも聴いていません、爆〜。

「幻想」はあまり聴くことがないので、余計にこういう演奏を聴くこともなくなってしまいます。どうしてなのかな??と、自分でも思ってしまいます。マルケヴィッチの「幻想」、オーマンディ師のものは面白かったですが〜。

ミ(`w´彡)
2009.09.01 Tue 15:17 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

高田純次、芸人というにはとくに芸を持っていないのですが、笑えます。本人は俳優を自称していますが、どちらにしても面白いです。
注文されましたか。さすがです。冒頭から爆笑です。

ドホナーニの演奏ではベルリオーズとかマーラーとか管弦楽の派手な曲に興味をそそられます。この「幻想」は大当たりでした。
マルケヴィッチとラムルー管のをもう一度聴きなおしてみようと思います。オーマンディ師のものにも挑戦したいですね。
2009.09.02 12:39

やっと手に入れました - neoros2019

ディスクユニオン新宿で720円で見つけ即購入。合わせてディスクユニオン御茶ノ水にてショスタコ10番も手に入れました。
期待に違わず鋭利に満ちたゾクゾクするような切れ味のフレーズ処理が連続する表現に胸が踊ります。
ミカケダオシも甚だしいゲルギエフやシャイーのような失望感に囚われることもなく、久しぶりに堪能できました。
両親が反レジスタンス運動にかかわりナチスに殺害されるという青年期における凄まじい過去を背負うドホナーニだけあって、ショスタコ、ベルリオーズの音楽性がもつブラックな闇の部分が妙にシンクロされていて大変興味深い表現力をもった指揮者だと思います。
2017.03.11 Sat 17:22 [ Edit ]

neoros2019さん、こんにちは! - 管理人:芳野達司

ショスタコ10番ですか、いいですね、録音しているのをしりませんでした。
思えば、彼はけっこう録音多いと思うのですが、少ししか聴いていません。マーラーは5番だけだし、ブルックナーはまだ1曲も。。。
廉価版が少ないだけに、ディスクユニオンは活用したいですね!
ボクもお店にいったら、探してみます。
2017.03.12 17:29
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