忍者ブログ

シュナーベルのシューベルト「即興曲集」

2008.02.24 - シューベルト
schubert

シューベルト 即興曲集 シュナーベル


先日、新聞を読んだら、前の職場の上司が来年度からシャチョウになることが報じられていた。
現社長はわりと最近に就任していたので、ちょっとオドロキだった。
最近ではあまりいないタイプの、武闘派である。まあ、今も昔もそんなにはいないだろう。普通の会社にそんなヒトが多かったら困る。
その彼に傘で殴られたことがある。
「そりゃ、おおげさだろう」と思うかもしれないが、本当である。
それはあるプロジェクトの打ち上げの席だった。当初からけっこう危機的なプロジェクトであり、それがなんとか収束がついたということで、ここちよい緊張感の緩みが全体的に漂っていた。
その日は雨の日だったのだろう、折りたたみの傘を脇に置いておいた。隣に座っていたのが不幸であった。
なにかの話で盛り上がって、まるでツッコミを入れるようなノリで、その折りたたみ傘で頭をボコボコと。
笑いながらではあったにせよ、あれは痛かった。
もともとそういう性質のヒトだったので、周囲は特段気にすることなく、いたって普通の出来事として流れていった。
全体的には和やかな宴会であったと記憶する。よくあることといえば、よくあることかもしれない。
あれから10年。
そのヒトとは、年賀状のやり取りをさせてもらっているが、年に一度、あの痛さの記憶がよみがえる。
宴会で殴られる部下がいなくなることを、陰から願うばかりだ。


即興曲は、1827年頃の作曲だから、シューベルト最晩年の作品といえる。
ただ、若くしてこの世を去っているので、若者の手によるものか、晩年のものなのか聴いただけでは相変わらずわかりづらい。作曲年代を知って、初めて後期の作品だと知るところだ。
シュナーベルのテンポは、ブレンデルに比べるとやや速めだ。でも性急という感じはしない。
むしろ短時間でじっくりと歌っているような指さばき。
テンポをあまり動かさないし、強弱の起伏も少ない。とても端正で毅然としている。どちからといえば、硬派。
そうした毅然とした佇まいから、シューベルトの田園的情感が淡く浮かび上がる。
それにしても、この曲はいい。
ソナタの冗長さもときにはいいけれど、このくらいの、歌曲に通じるようなサイズの曲でのシューベルトの柔らかい感覚は、何にも代えがたい。

1950年。ピアノの音が澄んだ、不満のない録音。
PR
   Comment(2)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP

Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

今日は久しぶりに、マーラーの2番、スィトナー盤は初めて聴きました。意外に聴きやすい演奏ですね、変な力こぶが入っていなくて、スッと入っていける演奏でした。

部下を殴る上司、傘であったとしても、そういう上司ってまだおられるんですね、貴重な存在かもしれませんね~。私は、あまり上下関係のある職場にいたことがありませんので、その辺りのことは分からないのですが~。

シュナーベルというとベトベンを思い出しますね、昔はLPで持っていたように思うのですが、今はまったく聴いていませんでした。シュベルトに至っては、まったくです。

吉田さんの紹介される演奏にはかなり影響を受けていまして、レーグナーの4番も注文してしまいました、爆~。そのうち、ブログでも書きたいと思っています。

演奏を紹介しながら思うのですが、なかなか演奏のことを上手く表現できませんね~
ここが良いっていうところをなかなか上手く言えないものですね~。

ミ(`w´)彡 
2008.02.24 Sun 20:59 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

去年転職したので、暴力上司(?)の手にかかることももうないですが、一風変わったヒトビトと環境であったと改めて思い、離れてみれば懐かしいものです。

スィトナーのマーラー聴かれましたか。あれはなかなかの演奏ですよね。自然体でありながら、要所はビシッと締まっています。

シュナーベルというとベートーベンのソナタの全集がありますが、まだ一度も聴いていません。シューベルトが良かったので、聴いてみたくなりました。シューベルトはモノラルながらいい録音でした。

rudolf2006さんの4番レビュー、楽しみにしています!
2008.02.25 12:36

無題 - sweetbrier

こんばんは。
吉田さんが過日エントリーされたブレンデル盤にコメントしただけではすまず、今日は古いシュナーベルのLPを探す日帰りの旅に出ておりました。
硬派シュナーベルが奏でる「歌曲に通じるようなサイズの曲でのシューベルトの柔らかい感覚」、今の私にはどんなふうに感じられるか、早く試してみたいです。ブレンデル盤も。

職場に限らず、他人を苛んだ人は、苛まれた人ほどに、そのことを覚えてはいませんねえ。

TBさせていただきましたm(_ _)m
2008.02.25 Mon 23:35 URL [ Edit ]

Re:sweetbrierさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントとトラックバックをありがとうございます。

シュナーベルのシューベルトは、やや速めのスッキリ味のなかにほのかな情感が漂っていて、これもいい演奏だなあと思いました。
142-3は、とてもなにげなく、かめばかむほど味があるピアノです。
こないだの日曜に3回聴いてしまいました。
1950年のモノラルですが、とても明瞭に聴こえるのもありがたいことです。

>他人を苛んだ人は、苛まれた人ほどに、そのことを覚えてはいませんねえ
おっしゃるとおりかも知れません…。
2008.02.26 12:44
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

TrackBack

この記事へのトラックバック
TrackBackURL
  →
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
カッチェン、フロマン、ブラームス"ピアノ協奏曲2番" from:Yoshimi
-11/16(Thu) -
フルニエ、フィルクスニー、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-03/18(Sat) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-02/20(Mon) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:“スケルツォ倶楽部”発起人
-02/20(Mon) -
古典四重奏団、ベートーヴェン、15,13"大フーガ" from:老究の散策クラシック限定篇
-10/30(Sun) -
最新TB
カテゴリー