カラヤン指揮ウイーン・フィル他の演奏で、R・シュトラウスの「ばらの騎士」を聴きました(1982、83、84年、ウイーン、ムジークフェラインザールでの録音)。
先週に視聴したC・クライバーの演奏は比類がないと思われましたが、このカラヤン盤も素晴らしい。音質そのものに関しては、セッション録音であるこちらのほうが精度が高いし、豊かな残響も味わうことができます。
映像がないぶん、音で勝負。
歌手陣のなかでモルとホーニクとツェドニクは、この両方のディスクに同じ役で登場しています。まさにハマリ役だということでしょう。
トモワ=シントウの元帥夫人は、声がとても艶やか。その色香は、コクがあって柔らかなウイーン・フィルの響きとうまく溶け合っています。1幕の終盤で、ヴァイオリンやチェロ、クラリネットと掛け合うところは、とりわけ美しい。
バルツァのオクタヴィアンは、声が素晴らしくよく響きます。そして明るい。オッターのようなボーイッシュな雰囲気は薄いものの、みずみずしい感性に胸を打たれないではいられません。
モルのオックスは、声がたっぷりと柔らかく、厚みがあります。前に述べたように、彼はクライバー盤でも同じ役柄を歌いますが、声そのものはこちらのほうがコンディションがいいように感じます。セッションだからかもしれない。
ペリーのゾフィーは、若干そっけないというか、ツンツンした感じがします。そういった役柄として考えているのかもしれない。それはそれでなかなか魅力的。高音の伸びはいいようです。
ホーニクとツェドニクは安定感抜群。言うことなし。
カラヤンの指揮は、細部まで丁寧に磨き抜かれたもの。舞台の「ばら」は銀色ですが、音楽は黄金色に輝いています。クライバーと同じオーケストラなわけですが、こちらのほうがいくぶんおっとりした、というかゆったりとした風格を感じさせます。ウイーン・フィルは、1980年代の録音においてもこういう響きを出せたのですね。とりわけ、2幕の出だしのところの濃厚さと、貴婦人の香水が匂い立つようなワルツはたまりません。
カラヤンの「ばら」は、フィルハーモニア管弦楽団を指揮した1度目の録音も有名ですが、私はこちらが好み。
アンナ・トモワ=シントウ(ソプラノ:元帥夫人)
クルト・モル(バス:オックス男爵)
アグネス・バルツァ(メゾ・ソプラノ:オクタヴィアン)
ゴットフリート・ホーニク(バリトン:ファーニナル)
ジャネット・ペリー(ソプラノ:ゾフィー)
ハイツ・ツェドニク(テノール:ヴァルツァッキ)
ヘルガ・ミュラー=モリナーリ(アルト:アンニーナ)
ヴィルマ・リップ(ソプラノ:マリアンネ)
ヴィルソン・コール(テノール:歌手)、ほか
ウィーン国立歌劇場合唱団
パースのビッグムーン。
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