マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏で、R・コルサコフの「シェエラザード」を聴く。
この演奏は、LP時代によく聴いていた。30年くらい前のことである。思い出は美しいから、美化される。この演奏もそうで、その後いろいろな「シェエラザード」を聴いてきたなかで一番のお気に入りとしていた。
改めて聴くと、悪くはないが、一番とは言えないかな。1楽章のチューバの鳴りがよくないからだ。第2主題のここが明確に聴こえないと、気持ちが悪い。意図的に鳴らさないようにしている気配も感じられるが、楽譜には書かれていないのだろうか。まあ、鳴っていた方がいい。
あと、2楽章の前半で弦楽器のアンサンブルに乱れがあるのは、このコンビにしては珍しい。
そのほかのところは、いかにもマゼールのクリーヴランド時代といった、ポキポキ感が満載であるから聴きごたえがある。こんなに小回りのキレがいい「シェエラザード」はないだろう。大オーケストラのエキスをギュッと濃縮したような音なのである。ひとつひとつのパートにキッチリと目が行き届いている。ティンパニと金管との溶け具合は最高。いい音を出している。
個々の奏者はうまい。とくにファゴット、オーボエ、トロンボーンは名人芸。言い忘れてはいけないのは小太鼓。4楽章のクライマックスで、一粒づつ聴こえる几帳面さは異色であるかもしれないが、面白いことこの上ない。
ヴァイオリン・ソロはダニエル・マジェスケ。小粒でピリリと辛いところが、オーケストラのスタイルに合っている。
マゼールがベルリン・フィルを振ったこの曲の演奏を、改めて聴きたくなった。
1977年10月、クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアムでの録音。
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