城山三郎の「運を天に任すなんて」を読む。
これは、55歳で日本興行銀行頭取となり戦後の日本経済の難問を解決し、「財界の鞍馬天狗」と呼ばれた男、中山素平の伝記。
波乱はありつつも結局は順風漫歩な人生。最近こういう伝記を読むと感心するというよりはむしろ、世間の人々の体力・知力・運がたまたま彼に偏っただけなのであろう、などと穿った考えを持ってしまう。如何なものか。
台北滞在中にたまたまコンサートを見つけたので嬉々として行った。
プログラム:
ハイドン チェロ協奏曲ハ長調
ミュラー 2台のチェロのための協奏曲
シューマン 交響曲第3番「ライン」
指揮:ゲルノート・シュマルフス
演奏:長栄交響楽団
チェロ:アントニオ・メネセス、ピ・チン・チェン
ハイドンのソロはメネセス。堂々として恰幅が良い。技巧も音色も申し分のないチェロ。自然な弾きぶりに風格が漂っていた。たっぷりと脂ののったハイドンだった。
ミュラーの曲はこれが初演(台湾での?)だったらしく、作曲者が冒頭であいさつをしていた。英語と北京語の翻訳でのスピーチであったが、これがけっこう長いわ、意味がわからないわでちょっと弱った。
音楽そのものは30分を超えるくらいある大曲。後期ロマン派を思わせるようなメロディアスな音楽であり、ふたりのチェリストの力演もあって、こちらはスピーチのような退屈さはなかった。
休憩を挟んで、シューマンの「ライン」。ヴァイオリンを6プルト、コントラバスを6台揃えた編成。とりわけヴァイオリンは美しく、ときにシルクのような肌触りを想起させた。
指揮はわりとコマゴマと変化させていた。その変化は意表をつくものではなく、自然な流れに沿ったものであったので、違和感はなかった。というよりも、シューマンのロマンを色濃く堪能することができた。
私の知る限り、台北のプロ・オーケストラは国家交響楽団と今回聴いた長栄交響楽団のふたつ(間違えていたら教えてください)。これで両方聴いたことになった。
長栄で目立ったのは、女性の活躍ぶり。8割くらいが女性の奏者。明るい緑の服で揃えた美女を見るのは楽しかったが、演奏もレベルが高い。ことに弦楽器の高さは、日本を超えて欧米クラスといってもいいのじゃないかと思う。未だに心にやきついている(緑の洋服と共に)。
国家音楽廟で音楽を聴くのは約10年ぶり。前回は3階席、今回は1階の屋根の下の席だったが、1階席のほうが音響はいいようだ。
2012年5月8日、台北、国家音楽廟(国立コンサートホール)にて。
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