キーンと晴れた秋晴れのなか、筒井一貴さんのピアノによる「沈黙は金・雄弁は銀」コンサートに足を運びました(2021年10月23日、ソフィアザール・バロック高円寺にて)。
筒井さんは酒席のみならず、こうした舞台でも饒舌ですが、それはひとまず「銀」としておくとのこと。で、寡黙にならざるを得ない演奏中の振る舞いは「金」であると。なるほど、演奏家のこれは矜持か。
彼が構築するピアノの音世界は、実になめらかに雄弁に、聴き手の胸にうったえてきます。
とても印象的だったは、ポンセの間奏曲とドビュッシーの夢、そしてモーツァルトのニ長調ロンドを続けて弾いたところ。
ポンセは、フランシス・レイの「ある愛の詩」を思わせるメロディ、ドビュッシーもまた淡くて甘い夢のような男世界、これを弾く筒井さんの眼差しは、優しく温かい。
それがモーツァルトになると、佇まいは少し変わる。荒海のような厳しさが周囲を包む。トーンこそ明るいものの、なにかに切羽詰まったような緊張感が非常に強く、手を汗を握りました。
これは曲そのものの性質にも依るのでしょう。古典派だから、と十把一絡げにはできませんが、モーツァルトの峻厳さを改めて感じないわけにいきませんでした。
後半は急な用事ができたため、サティまでしか聴けなかった。残念。
次回は最後まで聴きたいと思います。
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