ペーター・レーゼルのフェアウェル・コンサートに足を運びました(2021年10月13日、紀尾井ホールにて)。
ハイドン:ソナタ52番
ベートーヴェン:ソナタ32番
シューベルト:ソナタ21番
レーゼルさんのピアノを聴くのは7年振り。前回はブラームス、シューマン、そしてシューベルトの20番ソナタを弾いてくれましたが、とくにソナタは印象に残っています。
深く沈静する闇のようなものと、空気を切り裂く一筋の光が入れ代わり立ち代わり現出するような世界に没入したものです。
なので、当公演はシューベルトの21番があることから、その続編であると勝手に位置づけていました。
そのシューベルトは、テンポの変化と抑揚がいかにもこなれており、いたって自然に硬軟が織り交ぜられた心地よいものでした。40分強が全然退屈じゃなかった。とりわけ、1楽章はあっという間に感じられました。
ただ、もう少しキレのある音色のほうが好みではありました。
ベートーヴェンもよかった。1楽章はいきり立たず、覚めすぎず、明晰な響きと盤石のテクニックでもって一気呵成に弾き切りました。姿勢のいいレーゼルさんが、箇所によってはかなりの前傾姿勢になり、その姿は鬼気迫るものがありました。
ハイドンは流麗。キラキラした魚の群れがのびやかに大海を泳いでいる、などということを連想。
アンコール3曲のあとは、観客の多くがスタンディング・オベーション。
レーゼルさん、まだ引退はしないそうだけど、高齢のため日本に来てピアノを弾くのはこれが最後とのことです。
楽しませてくれて、感謝!
PR