牧阿佐美バレエ団のチャイコフスキーの「白鳥の湖」を観る。
演奏は、アレクセイ・バクラン指揮東京オーケストラMIRAI。
「チャイコフスキーが音楽をつけたバレエ。これを観るためだけでも生きる価値はある」
踊りのことはあまりわからないが、深い感銘を受けないわけにいかなかった。とくに、4幕の白鳥たちの群舞。おそらく伝統を踏襲しているであろう白鳥の衣装を身につけた踊り手たちが、一糸乱れずに音楽に合わせて舞う。時にはつま先だって躍動し、ときには床にペタリと吸い付く。なんて幻想的なことだろう!
各国の踊りもいい。とくに気に入ったのは、ナポリの踊り。ふたりしてタンバリンを叩きながらのダンスは視覚的にも楽しかったし、音楽のアクセントとしても成功していた。
舞台は比較的簡素でありながら、配色、照明、衣装が絶妙で、音楽と相俟って、しばしば全身が痺れた。
バクランの指揮を聴くのは、昨年の新国立劇場の「くるみ割り人形」以来。この日はそれ以上に冴えていたように思う。踊りによって緩急と強弱を使い分け、リズム感よく音楽を構築していた。CDのように音楽だけでもじゅうぶんに聴きごたえのあるもの。
オーケストラMIRAIは臨時編成と思われ、正直言って不安があったが、杞憂に終わった。素晴らしく瑞々しい合奏と個人技。全体を通じてはオーボエとファゴットが、2,3幕ではハープが絶妙。断然うまい。こんなに見事なハープを聴いたことあったかな? ヴァイオリンとトランペットのソロも健闘した。
このオケは、東京のプロオケの精鋭に違いない。チャイコフスキーのバレエ曲はとても難しいはず、それを最小限のミスに留めて演奏し切った。
コントラバスが3台という編成はオケピットの制約があるからと推察する。でも、艶やかな響きはニ階席までじゅうぶんに届いた。
2016年2月6日、東京、文京シビックセンター大ホールにて。
ペドちゃん。
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