江東オペラの制作による、ヴェルディ「ドン・カルロ」公演に足を運びました(2019年4月28日、ティアラこうとう大ホールにて)。
区民オペラというと、舞台は非常に簡素なものが多いという印象があります。オペラを観るとき、演出よりも音楽に着目するからそれは構わないのだけど、舞台装置に厚みがあると、それはもちろん見ごたえがあって悪いものではない。
この日の舞台は、やはりシンプルでありながらも、センスの良さが目をひき、なかなか見ごたえのあるものでした。最初と最後のシーンで同じ装置を使うことで、統一感をだしていたところもよかった。
このオペラ、サンティーニの指揮による演奏で予習していたけれど、実際に舞台を観ると音楽がより明確に把握できる。音楽が形としてあらわれてくるような気がする。
それを如実に感じたのは、フィリポと宗教裁判長とのデュエット。CDだとひたすら陰鬱な音楽が、演技を交えると人間臭さが浮き彫りになり、情感が立ちのぼってくる。彼らの考えに共感はしないけれど、話は聞こう、という気にはなる。笑
ロドリーゴは隙のない歌唱で長丁場を引き締めました。女の喜怒哀楽を火のように湛えたエボリも素敵。エリザベッタは繊細で瑞々しい歌が印象に残りました。
指揮はとても快活で、ときに激情的。いっぽう、全体を通してうまくバランスを整えていたように感じました。
「ドン・カルロ」は比較的長丁場なゆえか(この日は休憩含め3時間40分)、終わった時は感慨深いものがあった。
ヴェルディのなかで、「リゴレット」や「トラヴィアータ」、あるいは「仮面舞踏会」ほどには頻繁にとりあげられないオペラですが、ヴェルディの傑作のひとつであることを確信させられる舞台でありました。
ドン・カルロ 小貫岩夫
エリザベッタ 津山恵
フィリポ 高橋啓三
ロドリーゴ 山口邦明
エボリ公女 田辺いづみ
宗教裁判長 追分基
テバルド 大津佐知子
カルロ4世 松澤佑海
レルマ伯爵 斎木智弥
布告者 津久井佳男
天使の声 高山由美
演奏:江東オペラ管弦楽団
合唱:江東オペラ合唱団
指揮:諸遊耕史
演出:土師雅人
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