ガブリエーレ・サンティーニ指揮ミラノ・スカラ座他の演奏で、ヴェルディ「ドン・カルロ」を聴きました(1961年、ミラノ・スカラ座での録音)。
先日に足を運んだ江東区民オペラの復習。
公演のレビューにこう書きました。オペラは「実際に舞台を観ると音楽がより明確に把握できる。音楽が形としてあらわれてくるような気がする」。本来は、舞台ありきで聴くもの。
だから、予習をするなら映像のあるメディアが有力だという考えは今も同様です。でも、舞台を観た後であれば、音だけのCDは有効だし演奏そのものは優れたものが多い。
なのでこのCD、脳裏に3日前の舞台情景が広がって、臨場感をもって心に迫ります。
イタリア語、5幕版によるもの。
歌手は豪華な布陣。バスティアニーニのロドリーゴはたっぷりとした威厳のある声から厚い友愛を感じないわけにいかないし、ステッラのエリザベッタはクールな佇まいからほんのりノーブルな色香が漂う。
カルロは弱い性格の持ち主との印象ですが、ラボーの歌はなかなかマッチョ。これも解釈、というかスタイル。面白い。コッソットのエボリは野の百合のように可憐。絶世の美女であろうことを夢想させられます。長いアリアも盤石。
クリストフのフィリポは重厚この上なく、ふくよかさもじゅうぶん。彼が上司だったら、発言内容に関わらず屈してしまうかも。宗教裁判長とのデュエットはなんともむっつりしているシーンですが、ここでもそう。ずっしり重く、腹に響く。ヴィンコもいい。ヴェルディのバス・バリトンはこの場面に極まれり、といった感じ。
指揮は堅実にして、このオペラの隅々を知り尽くしたように細やか。手だれの技。贅沢を言えば、若干薄味に感じます。歌手がみんな濃いからより顕著に感じるのか、あるいは歌を引き立てているのか。
とはいえ全体を通して、たいそう聴きごたえのある演奏であることは疑えません。
フィリポ2世:ボリス・クリストフ
ドン・カルロ:フラヴィアーノ・ラボー
ロドリーゴ:エットーレ・バスティアニーニ
宗教裁判長:イーヴォ・ヴィンコ
修道士:アレッサンドロ・マッダレーナ
エリザベッタ:アントニエッタ・ステッラ
エボリ公女:フィオレンツァ・コッソット
テバルド:アウロラ・カッテラーニ
レルマ伯爵:フランコ・ピーヴァ
王の伝令:ピエロ・デ・パルマ
天からの声:ジュリアーナ・マッテイーニ
ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
指揮:ガブリエーレ・サンティーニ
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