横山幸雄さんのピアノによる、「ロシア4大ピアノ協奏曲の饗宴」に足を運びました(2018年11月25日、オーチャード・ホールにて)。
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
アレクサンドル・スラドコフスキー指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
横山さんはこのような重量級の演目が得意なようで、ショパンの独奏曲の全部をたった2日間で演奏したこともあるそう。
ピアノを弾くのはある意味、肉体労働なわけだから当然疲れも出るだろう。どう見ても簡単そうではない曲を2時間以上に渡って弾いて、指がつったりしないのだろうか?
そんな危惧はよそに、横山さんは難なく最後まで弾きとおしました。
彼のピアノは、さらさらと流れる清流のよう。淀みなく音符を駆け巡ります。テクニックも万全で、難曲を大きな破綻なく弾き切りました。
4曲が全てロシア物ということもあるのでしょう、どの曲も同じ顔。その意味で、ニュートラルな音楽家だという印象を受けました。
全体を通して、技巧とフレージングの滑らかさにおいて、彼は間違いなく当代一の実力派ピアニストだと感じました。でも、感動しなかった。
それにしてもこのコンサート、最初はコンチェルトを4曲もやるような演目に違和感を感じましたが、オーケストラ付きのリサイタルだと思えば合点がいく。
コンチェルトは通常、オーケストラの演奏会の中の一貫として披露されますが、多くは1曲、たまに短いのが2,3曲といったところ。そのあたりは、ソリストのファンとしては食い足りないところかもしれません。
この日の正味時間が140分だとすれば、リサイタルよりいくぶん長いが極端ではない。そういう意味で、コンチェルトをたらふく食べた満足感はありました。
歯痒かったのは、時折オーケストラがピアノの音を掻き消していたこと。特にラフマニノフ2番の1楽章。この春にBBC交響楽団をバックに小菅さんが弾いたときもそうでした。
これは、マーラー「大地の歌」の1楽章で、オケがテノールを丸々覆ってしまうのと同様の構造的欠陥。どう解釈するのかは簡単ではないけれど、それを救うのが指揮者の仕事だと思っています。なので、昨日のマエストロはツマラナカッタと言わざるを得ません。
彼のピアノ、次回の機会あればリサイタルを聴きたいと思います。
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