都民芸術フェスティバルの公演。昔都民だったころはよく行っていたので、ここしばらく行っていないのに毎年案内がくる。比較的廉価なので毎年行こうと思いながら、なかなか果たせなかったが、今年は何年かぶりに足を運んだ。
オール・ブラームスの公演。
この夜の白眉はヴァイオリン協奏曲。
生で聞いた演奏では、一番よいものであった(いままで2,3回しか聴いてないけど)。
じっくりとテンポをゆったりとったもので、測定はしていないけど体感では45分前後はかかっている感じ。
長い序奏が終わった後にようやくヴァイオリンが登場するシーンでは、激しく空気を切り裂くような立ち回りが見事に決まって、この勝負あった。
竹澤のヴァイオリンは、軽やかさと切り込みの深さを併せ持つもの。
つややかな高音で天空を舞うような軽やかさで奏でていると思っていたら、強烈なアタックで周囲の空気を一変させる。どの場面でも一貫しているのは、音の安定感。ピンを張った絹糸のようにまっすぐで、繊細。全体を通してまったくブレることがないので、安心して聴いていられるのだ。
彼女が海外でひっぱりだこなのは、よくわかる。
オーケストラは、完全に脇役に徹していた。序曲では8本だったコントラバスを6本に抑え、音量も注意深く調整することによって、ソロの音を掻き消すようなことはまったくなかった。当たり前のようでいて、なかなかできることではない。
交響曲の4番は、スッキリとした端正な仕上がり。テンポは中庸で、気を衒わないまっとうなストレート勝負であった。
良かったのは、第1楽章。ヴァイオリンの溶け合う音が、ときどきゾクっとするような艶かしさを出していた。
4楽章では、終結部の直前にヴィオラを強く弾かせて際立たせていたのがとても効果的で、強い推進力を感じないわけにいかなかった。
日本フィルを聴くのは、たぶん20年ぶりではきかないくらいに久しぶりだったが、良かった。特に弦楽器の艶やかさは、部分的に海外の一流オケを思い出させるくらいだった。
隣に座っていた、ノイマンを30回くらいぶん殴ったような風貌のオヤジの、加齢臭と異様に激しい鼻息に集中力を削がれることもあったが、無事最後まで聴きとおすことができたのは幸いであった。
ブラームス・プログラム
「大学祝典」序曲
ヴァイオリン協奏曲
交響曲第4番
竹澤恭子(ヴァイオリン)
梅田俊明指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
2009年3月12日、東京芸術劇場
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