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オーマンディのムソルグスキー「展覧会の絵」

2009.03.08 - ムソルグスキー

齋藤正明の「会社人生で必要な知識はすべてマグロ船で学んだ」を読む。
マグロの「鮮度保持剤」の開発に携わっていた著者が、あるとき研究の参考のためにということで、マグロ船に乗り込むハメになる。
40日以上に渡る船酔いの日々、漁師からさまざまな智恵を授かる。

漁師…「マグロ漁の場合は、単純な計算じゃが、100本の釣り針に1匹マグロがかかるぐらいど」
私…「100回挑戦して、1回しかうまくいかないのはちょっとつらいですね」
漁師…「でも、何事もそんなもんじゃねーんか?人間は、頭がええ。船をつくってみたり、飛行機をつくってみたりと、他の動物では到底できないものをつくりよる。でも、そのおかげで自然の法則を忘れてしまっているように思えるの」
私…「自然の法則とは、100回の挑戦のうち、成功するのは1回だけという意味ですか?」
漁師…「いや、そんな確率のことを言っているんではねーんど。努力することに、見返りを求めんほうがいいと思うんど」

マグロ船というと、堅気の人間が乗るものではないという偏見があったのだが、本書を読んでイメージが変わった。
自然と命がけの勝負をしている彼らの生きる智恵は、深くまっとうで説得力のあるものだった。


今日聴いたCDは、ソニーの「The Great Collection Of Classical Music」シリーズの一枚。
ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏。

鳴るべき音がきっちり鳴っている演奏。とても開放的であり、ラヴェルの音響世界を十全に発揮していて痛快。
打楽器の扱いに、オーマンディ固有の改変があるように聴こえるが、全体の流れは滞りなく、色彩感はより効果的になっている。
この曲の演奏では、ラヴェルの華やかなオーケストレーションよりは、ムソルグスキーの陰影の深さを追求した演奏が少なくない。それはそれでいいものもあるけれど、このオーマンディ盤はどちらかと言えばラヴェルの色が強くて、カラッと明るい色調が基本になっている。
五木寛之風に言えば、これは「躁」の演奏。
前向きで、健全な鳴りっぷりが楽しめる。
ラヴェル編曲の「展覧会」は、今までさまざまな演奏を聴いてきたが、各ソロ楽器の雄弁さと、全体のスケールの大きさで、この演奏はトップクラスだと思う。

1966年の録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

私は養老孟司さんの本を愛読しているのですが、吉田さんが紹介されている漁師の話と同じようなことを養老さんは何度も何度も言っておられます。「ああすればこうなる」といった世界は人間の脳の中の世界であって、自然ではない、と〜。今の私たちは自然を忘れてしまっている、と〜。漁師さんとインタビュアーの食い違いが面白いですね〜。

出ましたね〜、オーマンディ師・フィラデルフィアの演奏、この曲もRCAで再録音していますが、私はこのCBSの録音の方が好きです。
カラッと晴れ渡った感じのラッパのソロから、最後の大団円まで、一切の感傷を排した演奏ですよね。吉田秀和さんはオーマンディ師がお嫌いですが、どうしてなのか、分からないんですよ。ショルティはけっこう評価されているのですが〜。
オーマンディ師・フィラデルフィアの演奏は、私が演奏する際のお手本です。学ぶことが多い演奏です。

ミ(`w´彡)

2009.03.09 Mon 05:58 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

養老さんの本にも漁師の話のようなことが出てきましたか。脳は自分に都合のよいことをひねり出すと、なにかの本で読みました。
漁師と「私」の話が食い違っているところは面白いですね。ボケているんだか、真面目なんだか…。

オーマンディ師の「展覧会」を初めて聴きました。いい演奏です。
CDではジュリーニ、ショルティ、マゼール、カラヤン、ムーティ…などいろいろあってそれぞれですが、オーケストラを楽しめる点について、このオーマンディ盤は追随を許さないものがあります。いままで聴いたなかで、一番気に入ったかもしれません。
あと、カップリングの「禿山の一夜」も最高です。
2009.03.09 12:51
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