齋藤正明の「会社人生で必要な知識はすべてマグロ船で学んだ」を読む。
マグロの「鮮度保持剤」の開発に携わっていた著者が、あるとき研究の参考のためにということで、マグロ船に乗り込むハメになる。
40日以上に渡る船酔いの日々、漁師からさまざまな智恵を授かる。
漁師…「マグロ漁の場合は、単純な計算じゃが、100本の釣り針に1匹マグロがかかるぐらいど」
私…「100回挑戦して、1回しかうまくいかないのはちょっとつらいですね」
漁師…「でも、何事もそんなもんじゃねーんか?人間は、頭がええ。船をつくってみたり、飛行機をつくってみたりと、他の動物では到底できないものをつくりよる。でも、そのおかげで自然の法則を忘れてしまっているように思えるの」
私…「自然の法則とは、100回の挑戦のうち、成功するのは1回だけという意味ですか?」
漁師…「いや、そんな確率のことを言っているんではねーんど。努力することに、見返りを求めんほうがいいと思うんど」
マグロ船というと、堅気の人間が乗るものではないという偏見があったのだが、本書を読んでイメージが変わった。
自然と命がけの勝負をしている彼らの生きる智恵は、深くまっとうで説得力のあるものだった。
今日聴いたCDは、ソニーの「The Great Collection Of Classical Music」シリーズの一枚。
ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏。
鳴るべき音がきっちり鳴っている演奏。とても開放的であり、ラヴェルの音響世界を十全に発揮していて痛快。
打楽器の扱いに、オーマンディ固有の改変があるように聴こえるが、全体の流れは滞りなく、色彩感はより効果的になっている。
この曲の演奏では、ラヴェルの華やかなオーケストレーションよりは、ムソルグスキーの陰影の深さを追求した演奏が少なくない。それはそれでいいものもあるけれど、このオーマンディ盤はどちらかと言えばラヴェルの色が強くて、カラッと明るい色調が基本になっている。
五木寛之風に言えば、これは「躁」の演奏。
前向きで、健全な鳴りっぷりが楽しめる。
ラヴェル編曲の「展覧会」は、今までさまざまな演奏を聴いてきたが、各ソロ楽器の雄弁さと、全体のスケールの大きさで、この演奏はトップクラスだと思う。
1966年の録音。
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