東京シティ・フィル、第300回定期演奏会を聴く。高関健指揮で、ベルリオーズの「ファウストの劫罰」(2016年9月10日、初台、東京オペラ・シティにて)。
ファウスト:西村 悟
メフィストフェレス:福島 明也
マルグリット:林 美智子
ブランデル:北川 辰彦
合唱:東京シティ・フィル・コーア
合唱指揮:藤丸崇浩
児童合唱:江東少年少女合唱団
「二人はそれぞれ黒い馬にまたがり、地獄へと走る! そのシーンの管弦楽法は意外なまでに簡素だ。ヴァイオリンとオーボエのみで、極度の劇的緊張感を出せた例は、西洋近代音楽300年のなかでも稀なのではないか」
結論から言うと、とても素晴らしい演奏会だった。感動した場面がいくつもあった!
この曲を聴くにあたり、キーポイントはいくつかある。ソロ歌手であったり、合唱であったり、弦楽器であったり、指揮者の采配による抑揚感であったり。そのなかで、大きなもののひとつは管楽器の活躍、であると思っている。特に、木管。艶やかに飛翔する様に興奮しないではいられない。マルケヴィッチ/ラムルー管弦楽団、ハイティンク/オランダ放送フィル、ショルティ/シカゴ交響楽団、チョン/バスティーユ管弦楽団あたりは、名盤の誉れ高いディスクであるが、どれも、管楽器の性能が良いし雄弁、前面に出ている。
それが、本公演に見いだせたか。
高関は好きな指揮者だが、実演を聴くのは久しぶり。早稲田大学交響楽団のときだから、およそ30年ぶりになる。折り目正しい端正なスタイルはクリーヴランド時代のマゼールを思わせ、気に入っていた。だから、この公演には大きな期待をした。
オーケストラとソロ歌手、合唱の音量が絶妙で、どのパートもしっかりと聴こえた。できそうでなかなか難しいことだと思う。だから、安心して聴いていられた。
歌手はみんな良かったが、とくにファウストを気に入った。若々しく実直な歌いぶりは、いかにも悪魔に籠絡されそうな雰囲気を醸し出していた。地獄落ちのシーンは、圧巻だったと言うしかない。
可憐さと淡い色香が同居したマルグリット、ずっしりと声量のあるメフィストフェレス、豊満なブランデルもいい。
オーケストラは、おそらく潜在的に持っているであろう才能の全てを出し切ったかのようなパフォーマンスを聴かせた。ほぼ、非の打ち所はなかった。フルート、ピッコロ、オーボエ、ヴィオラ、ホルン、ティンパニ.....挙げたらキリがない。みんな、良かった。
罰当たりを承知で欲を言えば、「地獄の饗宴」においての合唱とオーケストラとの激しい掛け合いは、もっとパンチをきかせてもよかったかな。わりとマイルドな響きだった。とは言え、迫力は涙がちょちょぎれるほどであったけれど。
屋根の上のパーティ。
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