望月哲也さんのテノール、河野智美さんのギターで、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」を聴きました(2017年9月27日、初台、近江楽堂にて)。
この曲のギター伴奏を聴くのは、ラ・フォル・ジュルネで吉田浩之さんのテノールと鈴木大介さんのギターで聴いて以来9年ぶり。あの演奏はとてもいいものだったけれど、不思議にギター伴奏のコンサートは少なく、聴く機会がありませんでした。
なので、こうして気鋭の演奏家による「水車小屋」を聴くことは念願のひとつでありました。
果たして、素晴らしかった!
望月さんの歌は、若々しくて、ふっくらしていて、色っぽい。とくに毎回、フレーズの最後の処理の仕方が、ニュアンス豊富であり、鮮やかであるように思いました。
どれもよかったなかで、とりわけ気に入ったのは、「涙の雨」と「緑のリボン」、「小川の子守唄」。
「涙の雨」は、6節から成り立っています。そのひとつひとつを、微妙に(ほんとうに微細に)変え、最後の6節で「そうしたら、僕の眼から涙があふれ水面を波紋で乱した」と歌いあげるところでは、若者に感情移入しないわけにいきませんでした。感涙。
「緑のリボン」での、若者のいきりたちかたも、悲哀を込めて、見事に歌いきっていました。
河野さんのギターは、肌理細かくて、ときには激しく、万全のサポートぶり。
この曲は、小川の語り部による物語、というようにも解釈できます。伴奏部は小川の声です。小川は、冒頭から最後まで出ずっぱりなわけで、ちょっと乱暴に言ってしまうと「マタイ受難曲」における福音史家のよう。そのような役割を彼女は、おおらかに、ときには繊細に紡ぎあげていました。
ラゴスニックの楽譜であるかと思いましたが、ところどころ、CDとは異なる弾き方をしていたので、オリジナルが入っていたのか、そこははっきりとわかりません。
ホールもよかった。100人収容すればいっぱいになるくらい。天井が高くて、残響もたっぷりとありました。親密な大きさでありました。
素晴らしいコンサートでありました。
関係者の方々に深く感謝申し上げます。
パースのビッグムーン。
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