ズスケ弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲14番を再び聴きました(1980年1月、ドレスデン、ルカ教会での録音)。
彼らの演奏で、先々週「12番」を聴きました。柔らかくて、コクがあって、適度な粘り気があって、合奏が精緻なところは、この曲でも同じです。
14番を、弦楽四重奏曲の分野のみならずベートーヴェンの作品のなかでも最高傑作として推す音楽愛好家は少なくありません。あえてそれに反対する理由も見当たりません(好みは13番と15番ですが)。そんな曲を、ズスケは丹精込めて演奏しています。
1楽章はアダージョ。全体が序奏のような不思議な音楽。響きが緻密。テンポは中庸であり、それは以降の楽章でも踏襲されます。
2楽章はアレグロ。一転して明るい曲想。強弱の変化がデリケートにつけられています。
3楽章はアレグロ。この演奏では1分に満たない、いわば経過句のような音楽。間のとり方がいい。
4楽章は変奏曲。本作品の中核をなす楽章。ゆっくりとしていて穏やか、ひじょうに奥行きのある音楽です。4つの楽器がとてもバランスよく鳴っており、大きな広がりを感じます。
5楽章はプレスト。速い。速くなければならないメロディーでもある。ズスケは滑らかなテクニックで駆け抜けます。
6楽章はアダージョ。最終楽章へのこれも序奏のような風合いがあります。ヴィオラの嘆きが印象的。
7楽章はアレグロ。シリアスにして感動的な音楽。細かなニュアンスのセンスがいいし、合奏もことのほか美しい。
ルカ教会の豊かな残響と相俟って、比類のないような高みに到達しえた演奏と感じました。
カール・ズスケ(第1ヴァイオリン)
クラウス・ペータース(第2ヴァイオリン)
カール・ハインツ・ドムス(ヴィオラ)
マティアス・プフェンダー(チェロ)
パースのビッグムーン。
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