すみだトリフォニー・ホールは開場前に長蛇の列。プログラムによって入りが変わることがあり、この日は大盛況。
全席自由席で普段は1階の真ん中あたりに座るのだけど、すでに一杯に近かったので最前列に座る。ここはいい位置だった。
ビゼーの「カルメン」は演奏会形式。美術はないものの衣装と演技はほぼオペラそのままのスタイル。オーケストラを舞台の奥にずらせて前面の3~4メートルをあけたところで演技をする、といった趣向。歌手に加えて、オーケストラと指揮者も観られるわけで、これはうまい工夫。
カルメンやホセをはじめとして、色とりどりの衣装を着こなした合唱のメンバーが、まさに眼前3メートルのところで歌を歌い、喜んだり悲しんだりするわけで、これはまったくド迫力ものであった。息継ぎの音はもちろん、喉がふるえているところや、目じりのかすかなシワまで(失礼)手に取るようにわかるのだった。
歌詞は日本語で歌われており、これは正解。細かいセリフを覚えていないからわかるのが助かるし、言葉のつなぎ方がフランスと違っているところあたりが面白い。
歌手はそれぞれ声もニュアンスも素晴らしい。オーケストラを相手にすると声がかき消えがちになることがあるが、そんな懸念はなくむしろ逆に声のほうが大きかったりしていた。
オーケストラも安定していて、ことにフルート、ファゴット、コントラバスの技が冴えわたる。
それにしても「カルメン」はやはり素晴らしい。一幕の後半のミカエラとホセとの二重唱のあたりは退屈だと思うが、そこ以外はまったくもってスリリングで流麗。もっとも有名であるし、やはりもっともすぐれたオペラのひとつである。楽しかった。
浪川佳代(カルメン)
鵜木絵里(ミカエラ)
豊原奏(ドン・ホセ)
菅井寛太(エスカミーリョ)
日向ひまわり(講談)
IBMオンデマンド合唱団
2010年5月29日、すみだトリフォニー・ホール。
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