ニッセイ名作シリーズによる、モーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」公演に足を運びました(2018年11月11日、日比谷、日生劇場にて)。
まず演出が風変わりでした。フィオルディリージとドラベッラがAI(アンドロイド)という設定であり、衣装も舞台もSFの世界。それに加えてプロジェクション・マッピングを多用しており、視覚的に強い刺激のあるものでした。何年か前に「ポケモン」のテレビが問題になったけど、あれよりずっと激しい。子供が見たら卒倒してしまうかも。
オペラは、まず歌とオーケストラを聴くべきもので、舞台はオーソドックスなものでいいという趣向の古い人間だから、音楽を邪魔するような演出には抵抗がある。象徴的なシーンがあると、つい考えようとしてしまう。たいして意味はないくせに。
もしオペラの舞台に真実のようなものを求めるならば、ここにはなかったように思う。真実のようなものは実生活から滲み出るものだから。まあ、好みですが。
さて、歌手ではデスピーナと、代役だったらしいドラベッラを気に入りました。前者は変装のたびに声色を巧みに変え、ユーモアたっぷりの歌声と演技を披露してくれたし、後者は音程の確かな歌から漂う、仄かな色香が心地よいものでした。
コーラスはとても締まっていて聴きごたえがあった。
オーケストラはモダンとピリオドの折衷的なスタイルを思われ、キビキビとキレのある音楽を聴かせてくれました。
月並みだけれど、こうして実演を聴くとやはり「コジ」はいいと感じないわけにいかないし、「ドン・ジョヴァンニ」や「魔笛」に勝るとも劣らないどころか、こちらのほうが今の気分では好きです。
フィオルディリージ:髙橋 絵理
ドラベッラ:杉山 由紀
フェルランド:村上 公太
グリエルモ:岡 昭宏
デスピーナ:腰越 満美
ドン・アルフォンソ:大沼 徹
指揮:広上 淳一
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ
演出:菅尾 友
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