新国立劇場の制作による「フィレンツェの悲劇」と「ジャンニ・スキッキ」の公演に足を運びました(2019年4月14日、新国立劇場にて)。
マーラー音楽の流れを汲むと云われるツェムリンスキーの「フィレンツェ」は、夫婦と妻の愛人とによる愛憎劇。まずは夫役のレイフェルクスに注目しました。
60分間ほぼ出ずっぱり。パワーにはいささか欠けるものの終始安定した歌いぶりに、往年の名声が頭をよぎりました。
あと、齊藤の歌いぶりがとてもよかった。濃厚な色香を放つ声はこの退廃的ともいえるオペラによく馴染んでいるような感じがしたし、演技も妖艶で素晴らしかった。
しかしこのツェムリンスキー、マーラーとベルクの表面を切り取って口当たりをよくしたような音楽であり、こってり甘い。根強いファンはいるようだけど、私は取らない。
それに比べると、プッチーニの晩年の作品はよくできているように感じます。歌の華やかさと全体の構成、そしてオーケストラの聴かせどころが明瞭であって芯が通っている。
裏声をふんだんに披露したアルバレスの名唱を筆頭に、各ソリストの歌は小気味よく、雰囲気たっぷりに喜劇を盛り上げていました。
オーケストラは、おそらく想像しうる最上の出来。すべてのパートが曇りなく、雄弁に鳴っていて気持ちがよかった。
舞台美術を含む演出も気に入りました。前者はどっしりとしたゴシック調、後者はガリバー旅行記のような佇まい。シンプルながらも高級感があり、堪能しました。
フィレンツェの悲劇
【グイード・バルディ】ヴゼヴォロド・グリヴノフ
【シモーネ】セルゲイ・レイフェルクス
【ビアンカ】齊藤純子
ジャンニ・スキッキ
【ジャンニ・スキッキ】カルロス・アルバレス
【ラウレッタ】砂川涼子
【ツィータ】寺谷千枝子
【リヌッチョ】村上敏明
【ゲラルド】青地英幸
【ネッラ】針生美智子
【ゲラルディーノ】吉原圭子
【ベット・ディ・シーニャ】志村文彦
【シモーネ】大塚博章
【マルコ】吉川健一
【チェスカ】中島郁子
【スピネッロッチョ先生】鹿野由之
【アマンティオ・ディ・ニコーラオ】大久保光哉
【ピネッリーノ】松中哲平
【グッチョ】水野秀樹
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指揮】沼尻竜典
【演出】粟國 淳
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