新国立劇場の制作による、ヴェルディの「オテロ」を観に行きました(2017年4月15日、初台、新国立劇場にて)。
このオペラは、なにはともあれオテロの出来が全体の仕上がりに深く関わってきますが、ヴェントレのタイトルロールは力強くて、安定したものでした。
出だしは、少し声が割れるところもありましたが、後半になっていくに従って調子をあげていき、4幕は声の質、逼迫した演技力ともにとてもレベルが高かった。いいオテロ歌いだと思います。
イアーゴは安定感という意味ではオテロ以上で、しなやかで邪悪な歌をぞんぶんに楽しませてくれました。インテリやくざっぽい佇まいもよかった。
デズデモナも好演。全体を通してムラのない歌を聴かせてくれました。欲を言えば、もっと可憐な声が好きだけれど、こうしたやや太めでしっかりした歌声もいい。
カッシオはきめ細やかな歌が印象的、なおかつ若々しく情感に溢れていて、存在感を出していました。
合唱は、問答無用によかった。芯のある響きは透明感を湛えていた。もっと聴きたいと思ったくらい。
カリニャーニの指揮は中庸なテンポをとり、堅実に歌を支えていました。音量のバランスも絶妙。東京フィルは、持ち味であるまろやかな響きを存分に発揮しつつも、激しい箇所では整然と力強く咆哮していて、痺れました。このオーケストラを最近聴いた中では、もっとも高いパフォーマンスを出していたのじゃないかと思います。
演出はシンプルな舞台を基調にしていて、視覚的にわかりやすいものでした。ヴェネチアのシーンでは、舞台に水を張って運河を表現しており、キラキラと光っていて雰囲気がありました。
オテロ:カルロ・ヴェントレ
デズデモナ:セレーナ・ファルノッキア
イアーゴ:ウラディーミル・ストヤノフ
ロドヴィーコ:妻屋秀和
カッシオ:与儀巧
エミーリア:清水華澄
ロデリーゴ:村上敏明
モンターノ:伊藤貴之
伝令:タン・ジュンボ
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:パオロ・カリニャーニ
合唱指揮:三澤洋史
演出:マリオ・マルトーネ
再演演出:菊池裕美子
舞台監督:大澤裕
パースのビッグムーン。
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