新国立歌劇場の制作、ローラント・ベーア指揮 東京フィル・他の演奏で、モーツァルトの「魔笛」公演に足を運びました(2018年10月14日、新国立劇場にて)。
演出はプロジェクション・マッピングをふんだんに取り入れたもの。壁一面に光陰が織りなす絵は、大きさもあって演技者よりも目を引き付けられました。それは、夜の女王の2回目のアリアのときに効果を発揮しました。それはまるで彼女に後光が差したようで、神秘的でありつつ華麗だった。あとザラストロの宮殿のシーンなんかでも雰囲気を出していましたが、そのほかのシーンではあまりそぐわないというか、強く言えば音楽を聴く妨げになったような気がします。
歌手は、まずパミーナ。ねっとりとした艶っぽい声が素晴らしく、役柄を超えた妖艶さがありました。ザラストロは堅調。ずっしりとしたなかに若々しさがあった。夜の女王は、超高音の細かなコントロールが微妙にブレていたものの、ふくよかで伸びのある歌唱は素敵でした。タミーノとパパゲーノはまずまずといったところ。
オーケストラはピリオド奏法によりました。歌をけっして邪魔しない音量の抑制は見事でしたが、その半面ダイナミックに欠けるものがあり、華やかなはずの終曲はぐずついた感じになっていた。あと、レチタティーボの一部でピアノを使っていましたが、ピリオドならばチェンバロがいいだろうと思った次第。
全体的には歌手陣が安定しており、それが印象に残りました。
演出:ウィリアム・ケントリッジ
サヴァ・ヴェミッチ(ザラストロ)
スティーヴ・ダヴィスリム(タミーノ)
安井陽子(夜の女王)
林正子(パミーナ)
アンドレ・シュエン(パパゲーノ)
九嶋香奈枝(パパゲーナ)
升島唯博(モノスタトス)
成田眞(弁者)
秋谷直之(僧侶)
増田のり子(侍女1)
小泉詠子(侍女2)
山下牧子(侍女3)、他
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
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