新国立劇場の制作による、モーツァルト「フィガロの結婚」公演に足を運びました(2021年2月7日、新国立劇場オペラパレスにて)。
コロナ禍により、歌手や指揮者に変動があったプロダクションによる初日。
結論から述べると、演出は気に入りませんでしたが演奏は上質で、豊かな気分で帰途につくことができました。
スザンナは軽やかにしてコケティッシュ。往年のバトルの歌唱を垣間見ました。
フィガロと伯爵は終始安定。ただ、声質と体形が似ているので、もう少し違いのわかるキャストにしてもよかったのではないかと。
ケルビーノはいくぶんザラツキのある声がいかにもズボン役といった趣きがあり、気持ちのいい歌でした。
バルトロとマルチェリーナはユーモアの味がスマート。なかなか洒落ていました。
伯爵夫人の声は、あたかも練り絹を伸縮させているかのよう。艶やかで、柔和で、ほのかな陰りを湛えた響きは、大ホールの空間を幸せに満たしました。
演出は、舞台装置の話になりますが、最初から最後まで段ボールの山。これをかきわけかきわけ、人物が登場したり降りたり。
音楽に集中できることは確かだけど、あまりにも風情のない省エネ装置。途中で見飽きてしまいました。
オーケストラは堅実。響きにコクもあった。そして、歌を決してかき消さない塩梅は指揮者の見事な采配でしょう。これでもう少し歌いまわしに色気があれば言うことなし。
いずれにしても、この日曜日は伯爵夫人のものでした。
アルマヴィーヴァ伯爵:ヴィート・プリアンテ
伯爵夫人:大隅智佳子
フィガロ:ダリオ・ソラーリ
スザンナ:臼木あい
ケルビーノ:脇園 彩
マルチェリーナ:竹本節子
バルトロ:妻屋秀和
バジリオ:青地英幸
ドン・クルツィオ:糸賀修平
アントーニオ:大久保光哉
バルバリーナ:吉原圭子
二人の娘:岩本麻里、小酒部晶子
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団
指揮:沼尻竜典
演出:アンドレアス・ホモキ
美術:フランク・フィリップ・シュレスマン
衣裳:メヒトヒルト・ザイペル
照明:フランク・エヴァン
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