ギレリスのピアノで、リストのロ短調ソナタを久しぶりに聴きました(1964,65年、ニューヨーク、タウン・ホールでの録音)。
ギレリスは、ときに「鋼鉄のタッチのピアニスト」などと評されることがあるようですが、今まで聴いた限りだとそのようなイメージはありません。シューベルト、グリーグ、ショスタコーヴィチ、バッハ、あるいはベートーヴェンにしても。
音色が硬質で透明度が高いところが由来のような気がしますが、だったら「鋼鉄」よりは「水晶」のほうがしっくりくるような。
なんて。言葉遊びです。
このリストはギレリスが50歳前後のときの演奏。テクニックは目覚ましいし、折り目は正しく、弱音は「水晶」のように煌めいており、ところどころ琴線に触れる深みもある。聴きごたえのあるリストです。
彼には「巡礼の年」も録音してほしかったな。
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ベートーヴェンで云うと「ハンマークラヴィーア」の冒頭などは、硬くて力強く、まるでなにかをねじ伏せているように聴こえますが、31番になると響きは透明度を増すし、奥行きがグッと深くなりますね。彼のベートーヴェンのなかでも、後期の2曲は格別なピアノを聴かせてくれて、録音を遺してくれてよかったとしみじみ思います。