ヨゼフ・プロチュカのテノール、ヘルムート・ドイチュのピアノで、シューマンの「詩人の恋」を久しぶりに聴きました(1987年5月、バト・ウラッハでの録音)。
ヨゼフ・プロチュカ、好きなテノールのひとりです。炎の燃えさかる感情を直截にあらわした「美しい水車小屋の娘」は、忘れることができません。
ここでの彼の歌は、そのシューベルトの録音ほどには激しくなく、落ち着いているかに聴こえます。
細やかさ、折り目正しさが際立っていて、先のシューベルトとは一味違う。
でも、曲目によっては、彼の激情が迸ります。「恨みはしない」。ひらたく言えば、恋した女にフラれたことをブチまける屈折した歌なわけですが、彼は抑え込んだ感情の、なおも手のひらからこぼれる情緒を細やかに歌いあげています。抑えているぶん、救い上げている情感の濃さは増しているように感じられるのです。
その他の曲は、淡々としつつも瑞々しい。それにしても、なんと魅力的な美声!
検索する限り、彼の「冬の旅」の録音はないみたい。ぜひ聴いてみたかったものです。
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