小菅優、樫本大進、クラウディオ・ボルケスによる室内楽コンサートに足を運びました(2019年8月2日、サントリー・ホールにて)。
モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ト長調 K. 379
藤倉大:『WHIM』(世界初演)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ21番 「ワルトトシュタイン」
ブラームス:ピアノ三重奏曲1番(改訂版)
今まで小菅さんを聴いたのは一度のみ、ラフマニノフのコンチェルト2番。鞭のようにしなる強靭さと滑らかさとのコントラストの味がいいこと、そしてグラマラスな音色を併せ持ったピアノに、一発で魅せられました。そんな経緯があり、彼女が室内楽にどう向き合うのか、興味深いものがあったわけです。
モーツァルトは予想以上に軽やか。羽毛を思わせる重量なのだけど、太い万年筆で描いた筆致のようなところもある。その塩梅が面白く、気に入りました。
藤倉作品はピアノソロ。
楽譜があるのに譜めくりが不在なのは、追えないからか。どんな楽譜なのか見てみたいもの。
ウェーベルンを思わせる涼やかさはある。でも、新味はどこに。こんなことを求められるから、現代音楽は難しい。。
ベートーヴェンはこなれたもの。細身でスポーティ。鮮やかな技巧でこしらえた外向的な音楽。こんなに清々しいベートーヴェンを聴くのはいつ以来だろう?
ブラームスのトリオ、冒頭に奏される端正なチェロ、やがてそれに絡むほっそりとしたヴァイオリンの音に胸が熱くなりました。じんわりと内にこもった音楽であることが、「ワルトシュタイン」の後に聴くと一層顕在化するようです。この時季には少し暑苦しい曲ですが、たまには。
小菅さんの特長は、スポーティな切れ味と粒立ちのよさ。それは高い技巧に支えられてのものでしょう。
また聴きたいピアニストです。
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