小山実稚恵 ピアノ・リサイタルを聴く
(2016年6月18日、東京、オーチャード・ホールにて)。
ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ
バルトーク:ピアノ・ソナタ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番「ハンマー・クラヴィーア」
前半は、ブラームスとバルトーク。
ブラームスは、小山の硬質な音色を生かした筋肉質の演奏。それに加えて、ディテールに細かなニュアンスを施し、瑞々しい出来上がり。特にいいのは澄み切った高音、これだけの音をだせるアーティストは世界でも数少ないだろう。
とうとう最後の変奏曲があらわれたときの強い高揚感といったら! 背筋が痺れた。
この曲を生で聴くのは初めてだったが、充実したピアノに大満足。
次のバルトークは、テクニックの精度の高さではこの日最高のパフォーマンスだった。ピアノが打楽器の範疇に入るということを改めて感じさせられた。キレのある打鍵に、西洋近代音楽の野趣を感じないわけにいかなかった。
それらに比べ、後半のベートーヴェンの「ハンマー・クラヴィーア」は別人のように不調。
特に両端楽章はミスタッチが多かった。テンポの設定や強弱の塩梅など、全体を俯瞰するデザインは申し分ないと感じたが、いかんせんテクニックがついていけてなかった。
なにが問題だったのだろう。体力的にも精神的にも、内容が濃すぎる演目に難があったのかもしれない。
また、彼女のピアノを聴きに行きたい。
春。
PR