クァルテット・エクセルシオのベートーヴェン・チクルス最終日に行く(2016年6月18日、東京、サントリー・ホール、ブルーローズ)。
弦楽四重奏曲3番
弦楽四重奏曲8番「ラズモフスキー2番」
弦楽四重奏曲15番
どれも好きな曲なので、大いに期待。
エクセルシオは中庸の美を目指していたように感じた。どの楽章も奇をてらわないテンポと、極めてまっとうなニュアンス付けを実施しており、安心して聴くことができた。
王道と言えるアプローチ。
もっとも、ベートーヴェンの、特に後期の曲に対して大胆な解釈を施す団体は少なくて、知る限りではハーゲン四重奏団くらいだが。
3番は初期の中でも、もっともコケテッシュな音楽。第1ヴァイオリンはもっとハジけてもいいのじゃないかと思うほど、地に足をつけた弾き振り。
8番はラズモフスキーのなかで不思議と曲線的、中年男の気持ちの含みが漂う。そういったフォームが面白い曲。
だから、少し引っかかるような演奏が好みではあるが、ここもエクセルシオはど真ん中ストレート。脂臭さを丁寧に取り除き、洗練した音楽を提示した。
最後の15番を演奏するために壇上に登ったとき、さすがに第1ヴァイオリン奏者の表情がいささか引きつっていた。3楽章の「病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」への備えだろう。当該箇所は、ふたつのヴァイオリンによって、宗教的なまでに慎重に奏でられた。
終楽章の、あたかも鋼鉄の意志をもったメロディーが、4つの楽器によって弾かれると、なるほどこれがチクルスの最後に置かれたのは、実にふさわしいと感じないわけにいかなかった。
ベートーヴェンの後期を堂々と弾ききった彼女らの演奏は、清々しかった。
西野ゆか(第1ヴァイオリン)
山田百子(第2ヴァイオリン)
吉田有紀子(ヴィオラ)
大友肇(チェロ)
春。
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