久保田巧さんのヴァイオリン、野間裕美子さんのピアノによるコンサートに足を運びました(2018年6月30日、すみだトリフォニー、小ホールにて)。
久保田さんのヴァイオリンは、取り立てて美しいわけではないけれど、音程の確かさと、太い中低音の豊かさ、堅実なテンポ感で聴かせます。
軽やかに弾かれることが多いベートーヴェンの8番や、ロマンの香りが濃厚なグリーグの3番は、いささかドスが効いていた。激しい感情が荒々しく渦を巻いているようで、手に汗を握りました。そういう意味では、いささか変わった演奏と言え、ユニークで面白かったですね。
野間さんのピアノは粒立ちと歯切れがよく、弾力性に富んだもの。ベートーヴェンとシューベルトでそれを特に感じました。
ソロのラフマニノフ「音の絵」と「鐘」はそれに加えて、暴力的に黒々とした重低音がホールの隅々まで広がり、音楽のデモーニッシュな世界を垣間見せてくれた。でも音そのものは澄み切っていて、とても怜悧な肌触りがありました。
スケールの大きい、素晴らしいピアノでした。
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