ローマ歌劇場による、ヴェルディの「トラヴィアータ」公演に足を運びました(2018年9月15日、東京文化会館大ホールにて)。
このオペラ・ハウスについては、主に1960年代に演奏されたCDによって知るのみです。今回の指揮者も初めて。何年か前に経営状態が悪化し、指揮者のムーティが辞め、解体したのかと思っていましたが存続していました。その程度の知識しか持ち合わせていません。
さて実際に聴いてみると、いい。コッポラの演出は実にオーソドックス、不安感がありません。衣装はヴァレンティノが担当したらしいですが、ヴィオレッタの衣装は最初が黒と緑、2幕1場は白、2場は赤、3幕はまた白と、色とりどりであり、シックな雰囲気を醸し出していて楽しませてくれました。
そのヴィオレッタの歌唱は完璧と云っていい出来だと思います。声には艶があり脂ものっている。ニュアンスづけも繊細、演技もしなやか。
ドットは日本ではあまりメジャーではありませんが、彼女は素晴らしいソプラノです。
アルフレードもよかった。激情をストレートに歌いあげるものの、理性をうまく保っていてバランスがよかった。
ジェルモンは声の通りがよく、若々しい魅力がありました。欲を言えば、もう少し奥行きがあれば感銘が深まったかもしれません。
ビニャミーニの指揮は、どこを叩いても揺るがない職人技というべきもの。テンポは揺らさないものの、ときおり強弱の変化を大胆につけて、ハッとさせられました。でもそれは悪い意味ではなく、音楽の流れに則ったものであり、自然に受け入れられました。
ヴィオレッタを始め、レベルの高い公演だったと思います。
なお余談ですが、オケのヴァイオリニストが幕間に、R・コルサコフ、バッハ、チャイコフスキー、パガニーニを弾いて、拍手を浴びていた。なかなか素敵な余興でした。
ヴィオレッタ・ヴァレリー:フランチェスカ・ドット
フローラ・ベルヴォワ:エリカ・ベレッティ
アルフレード・ジェルモン:アントニオ・ポーリ
ジョルジョ・ジェルモン:アンブロージョ・マエストリ、他
指揮:ヤデル・ビニャミーニ
演出:ソフィア・コッポラ
PR