アシュケナージのピアノ、ショルティ指揮シカゴ交響楽団による演奏で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲4番を聴きました(1972年5月、シカゴ、クランナート・センターでの録音)。
このコンビによるベートーヴェンのコンチェルトを、1,3,4と聴き進めてきました。どれも持ち味を発揮した演奏だと感じます。アシュケナージのピアノは柔らかく、かつコシがあり煌びやか。ショルティのオーケストラは筋肉質でありつつ、隅々まで気を配ったもの。
この4番は、アシュケナージの天衣無縫なまでに軽やかなピアニズムが水際立っています。
冒頭のカデンツァはたっぷりとゆっくり始まります。上昇する和音を、ひとつひとつ丁寧に紡いでいる。昔、吉田秀和がR・ゼルキンとオザワによるこの曲を聴いて、この部分の遅さを特筆していたが、そのずっと前にアシュケナージがやっているではないか!
そしてそれ以降も、アシュケナージのピアノは常に優しい肌触りを保ちながら、ときには切っ先鋭く、ときには夢見るように響きます。
2楽章は柔和な響きでありつつも、神秘的な空気の清澄をかんじさせる。
3楽章はショルティの強いリードでガンガン推進する。チェロ・ソロが雄弁。アシュケナージはあたかも玉を転がせるような塩梅で、ここも痛快。
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